橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

新宿

「かんちゃん」

新宿西口のビックカメラ裏手あたりは、古い居酒屋が多い。思い出横丁は、戦争直後あるいは五〇年代から時間が止まったような雰囲気であるのに対して、このあたりは高度成長期の雰囲気が漂う。そのうちの一軒が、ここだ。 玄関脇には、ボロボロになった古いち…

「トラノコ」

寒い屋外で飲んでいたので、地下街に入るとほっとする。入ったのは、靖国通りの地下にある新宿サブナード。めったに来ない場所だ。ここを通り抜けて東口方面でどこか店を探そうと思っていたのだが、何とこの地下街に直結したビルの地下に、場違いな雰囲気を…

「モッツマン」

ここしばらくの間、仕事や雑用が多く、外で飲むことが少なかった。今日は大学の帰り道、以前から気になっていたこの店へ。本店は新宿区役所の近くにあるが、私がいったのは、西武新宿駅そばの支店。七時前だというのにほぼ満員で、店員が「オモテでいいです…

「第二宝来家」

「シャンソンとどぶろく」イベントの後は、新宿へ移動。同窓会をやっていた四年ほど前の卒業生と合流し、思い出横丁へ。こういうときには、やはり安心して飲める「第二宝来家」だ。ここは以前も取り上げたことがあるが、先代の金子正巳さんが敗戦直後に始め…

「淀橋再生酒場」

新宿西口の飲食店街は何本も縦横に交差して、なかなか全体が把握できないが、そのなかでも細い方の路地に、この店がある。一軒家を改装したような建物で、一階が立飲み。意外に広く、長いカウンターと、テーブルがいくつかあり、詰め込めば五〇人くらい入る…

新宿「ビアホール ライオン 新宿ライオン会館店」

銀座三越裏あたりにある新宿ライオン会館は、東京のライオンチェーンの中では、おそらく銀座七丁目店に次ぐ規模である。上階には和食やエスニック、ピザなどの店もあるが、一階と地下一階がオーソドックスなビアホール。今日、ポスターで知ったのだが、この…

「思い出横丁」の風景

今日は、静岡大学時代の教え子と、「思い出横丁」で待ち合わせ。最近、小さなビジネスを立ち上げたらしく、協力してくれというのだが、ちょっと分野が違う。適当に、話を聞いておく。 変わった看板が増えた。「トロ函」の上を見ると、まず巨大なキンミヤ焼酎…

「鳥じゅん」

大学の授業が終わったあと、DVDのケースを買いに、新宿西口のビックカメラへ。ビックカメラの裏手あたりには、古い居酒屋がいくつかある。有名なのは「ぼるが」だろうけれど、いつも満員なので入ったことがない。今日入ったのは、ビックカメラのすぐ裏の、こ…

新宿御苑前「あゆたて」

今日は、四年前の卒業生たちの同窓会。私にとっては、今の職場での最初の教え子たちで、現在二六歳。みんな会社にこき使われる年代らしく、ドタキャンもあったりして、集まったのは四人だけ。しかし前回と違って女の子も一人来て、葬式みたいにはならなくて…

「もつ煮込み 沼田」

調布にあるという「やきとり処 い志井」という老舗のもつ焼き屋には、まだ行ったことがない。この店が、複数の業態を使い分けながら、各地に進出している。とくに、もつ焼き中心の立ち飲みチェーンのさきがけである「日本再生酒場」は、高度成長期のテイスト…

「池林房」

新宿三丁目の裏手は、心ひかれる居酒屋の多い界隈である。いちばんの先輩格は、歌声酒場のさきがけとしても有名な「どん底」で、一九五一年の創業。一杯飲み屋ややきとり屋しかなかった当時は珍しい、いろいろな酒と料理を出す本格的な酒場だったという。当…

「ベルク」

新宿駅の東口改札を出て、少し右側前方にある「ベルク」というビアレストランが、最近話題になっている。狭いフロアにテーブル席と立ち飲み席があり、朝食の時間から夜遅くまで、人が絶えることがない。飲み物、料理とも、びっくりするくらい安い。なにしろ…

思い出横丁「もつ焼 ウッチャン」

最近、新宿思い出横丁に、いろいろ新しい動きがある。まず、旧「やきとり横丁」を含めて、飲食店街全体を「思い出横丁」と称するようになった。東京工芸大学の笠尾敦司さんを中心に、「思い出横丁からアートする」というイベントが行なわれた。そして、それ…

「エポペ」のパレスチナ・ビール

二軒目は、タクシーで新宿に移動して、歌舞伎町の「エポペ」へ。フランス語で「美しい冒険」という意味だそうで、創業者はフランス人のカトリック神父さんとのこと。落ち着いた雰囲気のレストランバーといった感じで、大きなコの字型カウンターとテーブル席…

「第二宝来家」

思い出横丁(旧・やきとり横丁)では、「きくや」と並んで来ることの多い店。拙著『居酒屋ほろ酔い考現学』でも、創業者の金子正巳さんのエピソードを含めて紹介させていただいた。「トロ函」の次の二軒目に入ったときは珍しく空席が多く、客を取られたのかと…

「トロ函」新宿思い出横丁店

久しぶりの新宿、もうひとつの驚きはこれ。なんと、旧やきとり横丁の南側、第二宝来家の隣に「トロ函」ができている。新小岩、赤羽に次いで三店目。メニューは基本的に同じで、焼物をテーブル上で焼いて食べさせるところも、またホッピー、天羽ハイボール、…

「消えた」やきとり横丁

久しぶりに、新宿西口へ。驚いた。西口の北側、小田急ハルク向かい側線路際の飲食店街は、線路に面した通りが「やきとり横丁」、その一本西側が「思い出横丁」のはずだったのだが、両方とも「思い出横丁」になっている。たしかに、この名前の方がしっくりく…

「きくや」

後期の授業は、今日が最後。これから定期試験と入試で忙しくなるのだが、ゼミの四年生も成績はともかく全員卒業できそうなので、一安心といったところだ。こうなると、ちょっと寄り道をしたい。向かったのは、新宿のやきとり横丁である。まずは入ったことの…

「鳥元」

買い物のあと、新宿西口の飲食店街へ。銘酒居酒屋「吉本」が目当てだったのだが、あいにく満席。どこへ行こうかと近くを見回すと、和風ながらちょっとモダンな感じの店に「炭火串焼・十割そば 鳥元」の看板が。そういえば、聞いたことがある店だ。外のメニュ…

ゴールデン街「H」

前にも書いたが、ゴールデン街は新宿東口にあった竜宮マートというヤミ市の飲み屋が移転したもの。ヤミ市オフの最後は、ゴールデン街でしめることにする。この店は元衆議院議員の長谷百合子さんが経営する店で、花園一番街中ほどの二階にある。あまり一般向…

「第二宝来家」

バーチャル居酒屋「とり橋」オフ・ヤミ市篇、二軒目は新宿に移動し、やきとり横丁の「第二宝来家」へ。やはり、ヤミ市時代に開業した新宿の焼きとん屋元祖だから、ここは外せない。山城屋さんが別の飲み会のため席を外し、初対面の人ばかりとなったが、大い…

「房’s 西新宿店」

「房's」は都内に四店を展開するワイン・ダイニング。ほかに、「はかりめ」や「鮨丸」などの姉妹店もある。ワインを一〇〇種類以上おき、グラスで飲めるものも三〇種類ほど。グラスワインは六〇〇−一〇〇〇円が中心で、地域・タイプともいろいろ揃っているか…

ダブリナーズ・アイリッシュ・パブ

新宿三越アルコットの裏手、ライオン会館の二階にあるアイリッシュ・パブ。テーブル席を中心に立ち飲みスペースを配したスタイル。写真のように、ギネスの大きな鏡、ポスターやさまざまな小道具で、アイリッシュ風を演出している。店内ではギターの弾き語り…

「つるかめ食堂」

今日は朝から青空が広がる。失敗を極度に恐れる気象庁の発表はまだだが、梅雨明けに間違いない。期末試験が終わった。採点はこれからだが、まあ一区切りついた。 というわけで、今日は昼食にビールを飲むと決めていた。どこにしようか。大学のある江古田には…

「きくや」の「鶏ハラミ」

鶏ハラミは初めて食べた。一般にハラミというのは、横隔膜のこと。サガリと呼ぶこともある。牛のものなら焼肉屋でよく見かける。カルビによく似ているが、軟らかく、脂はやや少なめで、値段は安い。解剖学的にいうと横隔膜はほ乳類の特徴で、鳥類にあるのは…

「画廊萬家」「最上」「第二宝来家」

今日は、『吉祥寺「ハモニカ横丁」の記憶』を書いた井上健一郎さんと池袋の東急ハンズ前で待ち合わせ。井上さんとは、今回が初対面。大学を卒業し、新潟で会社員をしておられるが、いまでも足しげく東京に通ってヤミ市研究を続けているとのこと。そこで本人…

思い出横丁「一富士」

思い出横丁の中ほどの西側には、古くから営業していて、良心的な値段で、しかもまあまあ入りやすい店が数軒並んでいる。ここは、その一軒。ビールはサッポロ黒ラベルの中瓶が五〇〇円、焼酎・酎ハイは四〇〇円、個々の料理の価格は明示されていないが四〇〇−…

「きくや」

仕事の帰り、ハイボールがどうしても飲みたくなって、ちょっとだけ「きくや」に寄る。ほぼ満員だったが、隙間になんとか入れてもらった。今日は、なぜか刺身がない。こんな日もあるんだな。ハイボールの一杯目は、いつになくぬるかった。二杯目からはまとも…

「道産子」

新宿西口商店街のパレットビル側、やきとり横丁と思い出横町の入り口に挟まれたところの地下にある。このあたりでは珍しい海鮮料理専門店で、肉類のメニューは馬刺と鶏唐揚げだけ。ホッキ貝、生ウニ、ルイベ、ニシン、ホッケなど北海道の魚介類が中心である…

「きくや」

今日は仕事帰りに、すっかりお気に入りになったやきとり横丁の「きくや」へ。まず頼んだのはハイボール、そしてタレ焼き四本。上から順に、レバ、アブラ、シロ、オッパイ。レバとシロはどこのモツ焼き屋にもあるが、アブラとオッパイは比較的珍しい。アブラ…