橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ガード下の魔窟

神田は、上野、新橋、新宿などと並んで、最大規模のヤミ市があった場所である。現在の飲食店街の大部分が、その範囲にある。その片鱗は、ガード下にみることができる。神田駅のガードは、山手線、京浜東北線、中央線など線路が多いため、線状ではなく面とし…

「テイルズ・エールハウス」

「せとうち」を出て神田駅の方へ少し歩いたところで、「ピルスナーウルケル樽生」の文字があるのを見つけた。日本で飲めるとは驚きだ。さっそく入ってみることにする。 ウルケルは専用のジョッキで出す。容積は、普通の中ジョッキくらいだろう。いい香りがす…

『週刊現代』ここぞ男の冬酒場

『週刊現代』二月五日号の巻末グラビアに登場しています。紹介するのは、東武練馬の「春日」、牛込柳町の「つず久」、八重洲の「ふくべ」など。ご笑覧ください。

「せとうち」

取材の打ち合せで、神田へ。JR神田駅からガードの東側を歩き、靖国通りに出る少し前のところの二階にあるのが、この店。岡山から仕入れた瀬戸内の魚が売り物である。 本日の刺身は、平目、肝付の皮剥、鰆、鮹、烏賊など。鮹は部位と切り方を変えた三種類。…

『嗜み』9号

最新号が出ました。連載中の「全国居酒屋ほろ酔い考現学」は、大分編。「遇の店 椿屋」「赤ダルマ」「こつこつ庵」「居酒亭時」「都町屋台街」などを紹介しています。 他の記事では、諸田玲子さんが訪問する讃岐の山あいのフレンチレストラン、藤沢周平の故…

大久保「千里香」

取材の後は、大久保へ移動。ワイタベさんに誘われて、酒業界関係者の小さな飲み会へ。集まったのは、恵比寿麦酒記念館の元館長や広報コンサルタントなど五人。いろいろ話を伺ったが、やはりプロは知識の幅が違います。 この店は、中国と北朝鮮の国境付近で作…

「つず久」

今日は雑誌の取材で、牛込柳町へ。山の手台地の東南端に近く、坂の多い場所で、かつては江戸城の守りにつく下級武士の住宅地。維新後は新中間階級の住宅地となり、夏目漱石も晩年をここで過ごした。交差点の少し裏手にあるのが、この店。 カウンター数席と小…

高知観光と吉田類さんの名刺

赤羽で吉田類さんたちと座談会をしたとき、名刺交換で名刺をいただいた。「高知県観光特使」の肩書きの名刺で、裏を見ると「高知県立施設等無料入場券」とある。県立の観光・文化施設と公立施設のいくつかが、この名刺を見せると無料で入場できるというので…

高知「大吉」

仕事を終えて土佐最後の夜は、まずこの店へ。あちこちのガイドブックにも載っている有名店なので、中身はどうかなとも思ったのだが、店先へ行ってみると、地元客らしい人々が次々に吸い込まれていく。これはいい店に違いないと入ってみて、大正解。 地元の名…

高知「オーベルジュ土佐山」

高知に移動して、二泊目はちょっとぜいたくな宿に泊まることにする。高知市内から車で三〇分くらい、温泉の湧き出る山の中にある、ゆったりスペースを取ったホテル・レストランである。部屋は二種類あり、二階建てのホテル棟の部屋と、吊り橋を渡った場所に…

四万十市「一煎」

この日の二軒目に入ったのは、この店。いかにも地元客相手の普通の居酒屋という趣で、しかも表に出ている品書きに「天然あゆ塩焼(二匹) 八〇〇円」とある。「たにぐち」にも天然鮎はあったが、それなりの値段だったし、今は季節ではないということで食べなか…

四万十市「たにぐち」

調査のため、高知へ。一日目は、高知竜馬空港(何というネーミングだ)から四万十市へ直行し、車で数カ所回ってから、中心街の中村で夕食。入ったのは、郷土料理で知られるこの店である。 まずはビール(キリンとアサヒがある)でのどを潤し、後は地元の司牡丹。…

「ハルチカ」

新宿・小田急ハルクの地下三階に、「ハルチカ」という新しい飲食店街ができた。出店しているのはビアレストランの「ミュンヘン」、カフェレストランの「魔法の国のアリス」、海鮮居酒屋「御さしみ家りんず」、やきとんの「ブビタミン」、串カツの「でんがな…

謹賀新年

あけましておめでとうございます。 昨年の正月に掲げた目標の達成度を検証し、今年の課題を考えることにしましょう。 『居酒屋ほろ酔い考現学』続編の執筆:構想は練っているのですが、まだ執筆に取りかかるところまではいきません。今年中には着手したいも…