橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『おとなの週末』11月号

雑誌に料理の写真を載せる場合、原則は原寸大で、必要に応じて料理の魅力が伝わる範囲で縮小する、というのが基本だろう。かつて文藝春秋から、原寸大を売り物にしたラーメン本や寿司の本が出ていたことがあるが、それぞれの店の看板メニューの魅力をよく伝…

「テング酒場」銀座店

小雨の降る並木通りを新橋方向に歩きながら、二軒目をどこにするか考える。すると、向こうに見慣れない看板が。自動車道路の下の雑居ビル・銀座ナインの地下には、フロアを細長くとった「天狗」銀座ナイン店があるのだが、その半分くらいを新業態の「テング…

並木通り「La Viola」

今日は、本屋めぐりをした後、久しぶりに銀座へ。まずは銀座らしい場所にも、ということでこの店へ。三笠会館が経営するイタリア風バールで、手前が立飲みバール、置くがテーブルのあるレストランとなっている。三笠会館らしい、そつのないインテリア。注文…

小岩「菊乃家」

二軒目に入ったのは、この店。駅を北側に出て、線路沿いに少し歩いた左側。奥行きのある店内で、奥の方はけっこう広い。串焼きは、豚、鶏、野菜といろいろあって、三本四〇〇円から。マグロ刺し七九〇円、イカ刺し六九〇円など、刺身類も何種類かある。この…

小岩「一力」

今日は、フリーライターの藤木TDCさん、出版社の編集者と小岩駅で待ち合わせ。小岩で飲むのは、実は今回が初めて。これまで気になっていながら、なぜか訪れるチャンスがなかった場所である。なせ小岩にしたかというと、雑誌「荷風」の六月号に藤木さんが、か…

「淀橋再生酒場」

新宿西口の飲食店街は何本も縦横に交差して、なかなか全体が把握できないが、そのなかでも細い方の路地に、この店がある。一軒家を改装したような建物で、一階が立飲み。意外に広く、長いカウンターと、テーブルがいくつかあり、詰め込めば五〇人くらい入る…

『古典酒場』Vol.8

このムックも、もう8号になった。今回のお題は「日本酒酒場」である。「吉本」「鍵屋」「伊勢藤」「串駒」などの有名店も揃えているが、「立呑屋」「清瀧」それにカップ酒の店と、大衆的な店もカバーしている。後ろの方には、連載のブロガー座談会もあり、私…

「らかんてい」と「経堂ゆる呑みマップ」

この店は、以前にも取り上げたことがある。住宅街の中の分かりにくい場所にあったのだが、最近になって経堂西通りの飲食店街に移転してきた。 店内は、少し狭くなったが、席数はさほど変わらないようだ。メニューは変わっていない。あいかわらず、いい刺身を…

ホッピーの価格表示

仕事を終えて、新宿へ。仕事で疲れたときは、もつ焼き気分になるのだが、たまには新しい店にも行きたい。やきとり横丁を歩いていると、「ホッピー300円」の文字が目にはいる。この場所で三〇〇円はあるまい、グラス飲み切りの値段だろうかと思いつつ、中に入…

「あきの」

一年ほど前にできた日本料理店。V字状の角地にあって、以前は居酒屋だった場所だ。その居酒屋のイメージがあまりよくなかったせいで、跡地に入った店までも見くびっていて、これまで足を運ばなかった。それが、たまたま目にしたネットの評が悪くなかったの…

「東京アメリカンクラブ」のシャンパン・ブランチ

今日は知人のフランス人と日本人の夫婦に招かれて、東京アメリカンクラブへ。ここは入会金二二〇万円、月会費二万円という高級社交クラブだが、知人は仕事で接待などに使っているらしい。本来は麻布台にあるのだが、現在は立て替えのため、一時的に高輪に移…

橋本健二『「格差」の戦後史』

今日は宣伝です。関心のない人、ごめんなさい。 河出書房新社から新しい選書シリーズ「河出ブックス」が創刊されました。第一弾として六冊が出版されましたが、その一冊がこれです。一九四五年から現在までの格差の動向と、格差がもたらしたさまざまな社会現…

江古田「月」

江古田に新しくできた立ち飲み屋。ビールケースに座ることもできるが、中途半端な高さで座り心地が悪く、半ば立っているような形になる。ビールケースを組み立てたテーブルも質素だが、最近はこういうのがトレンド。 ともかく、ドリンクが安い。酎ハイ類は、…

端田晶『とりあえず、ビール!』

先日読んだ『もっと美味しくビールが飲みたい!』の続編が、これ。今年七月の刊行である。軽妙で飾らない文章、嫌みのない博識は、ますます快調だ。印象に残った話題をいくつか紹介しよう。 太宰治に「禁酒の心」という短編があるとは知らなかった。酒が配給…

味平龍之尉『みひらん 東京下町沿線編』

「食農健レポート」という飲食店ブログを運営している著者が、ブログの内容を中心にまとめたもの。もつ焼き屋、ホルモン焼肉屋、居酒屋・小料理屋、食堂・洋食・ステーキ屋、立ち飲み、中華料理、その他、という七部構成だが、もつ焼き屋から居酒屋までの比…

福岡・天神「角屋」

久留米に一泊し、天神に戻ったのは昼過ぎ。連休前半の天神は、家族連れやカップル、若者たちで賑わっている。前回、天神に来たときにも寄った「ひょうたん寿司」で昼食をとった後、少し飲める場所を物色する。見つけたのが、この店。 一階と地階があり、地階…

久留米「樽平」

ホテルの近くまで帰ってきたものの、まだ九時過ぎ、宵の口(?)である。近くにどこかいい店はないものか。少し探すと、すぐにこの店がみつかった。店名は「樽平」である。「樽平」といえば、山形の名酒、そしてこの名酒を置く銀座の名居酒屋だが、この店はど…

久留米・新世界「とり和」

そろそろ酔いも回ってきたので、ホテルのある西鉄の駅の方向へ歩くことにする。心ひかれる小路や屋台を横目で見ながら数分歩くと、左手に何ともいえないオーラを放つ一角が表われた。間口の狭い店が密集する路地が、縦横に走るようすは、ちょうど新宿ゴール…

久留米「いち」

タイガースの店は、串三本とビール一杯だけで失礼する。たいへん居心地のいい店なのだが、何しろ初めて訪れる、しかももう一度来る機会があるかどうかも分からない土地である。他にもいろいろ見て回りたい。というわけで、三軒目は先ほどから本命と目をつけ…

久留米「田舎路」

二軒目に入ったのは、古い木造の平屋建て、間口が広く暖簾が横に長く広がる、何ともいえない佇まいのこのやきとり屋。カウンター九席のみの小さな店で、週末だというのに客がかなり入っており、談笑する声が外にまで聞こえている。 ちょっと予想外の店だった…

久留米「九十九」

せっかく福岡まで来たのだから、まっすぐ帰るのももったいない。幸いなことに、シルバーウィークだ。そこで、前から食べてみたいと思っていた久留米やきとりを求めて、天神からに私鉄に乗る。昼間は柳川まで行って川下りや散策で時間をつぶし、久留米に着い…

福岡・中州 人形小路

二軒目は、若手の弁護士さん二人と大学の先生の四人で、中州の人形小路へ。ここは狭い通路に居酒屋やバーが密集した、典型的な路地裏飲食店街。その成り立ちについては分からないが、おそらくは戦後のヤミ市起源だろう。これまで、その佇まいに心をひかれな…