橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2017-01-01から1年間の記事一覧

1月17日に、新著『新・日本の階級社会』が発売されます。2015年SSM調査と2016年首都圏調査という、2つの大規模調査のデータをもとに、新しい下層階級であるアンダークラスが、日本の社会を大きく変えつつある現実を描きます。ぜひ、ご一読を。もう予約できる…

青砥「小江戸」

この日は、国立歴史民俗博物館で開催されている「1968年」展を観に、京成線の佐倉へ。旧知の荒川章二さんを中心とする企画だが、当時の反政府活動へのシンパシーを感じさせる、国立らしからぬ展示で、見応えがあった。観客には、団塊世代と思われる男女が多…

「寿司辰」

この日は、われらがヤミ市研究会と、ヤミ市に関心を持つ埼玉大学の面々の交流会ということで、新宿思い出横丁へ。埼玉大学の遠藤環先生が予約したくださったのは、横丁の中通り入口近くの「寿司辰」。もつ焼き専門の私は、初めての訪問である。 最初の刺身も…

中野「炙谷」

今年も中野のエクステンションセンターで、居酒屋の講座をやった。昨年は15:00〜16:30という中途半端な時間だったためか高齢者が多かったが、今年は19:00からなので、現役サラリーマンやワーキングウーマンも参加している。 終わったあとは、当然飲みに行く…

低温調理の豚モツ刺

飲食店で生の豚モツ刺しを提供するのが禁止されて二年が過ぎたが、これに代わって低温調理の「モツ刺」を提供する店が増えている。注文すると出てくるのは、おそらく摂氏七〇度くらいで長時間熱した、火は通っているものの、ほんのり桜色だったり、生のよう…

三浦展『横丁の引力』

三浦展さんが東京とその周辺の横丁について論じた本である。各地の横丁を軽く案内するような本ではなく、かなりアカデミックだ。ヤミ市・花街・赤線、近代の下層社会、建築史などについての文献を渉猟し、横丁の魅力と存在意義について、骨太に論じていく。…

一之江「ななごう酒場」

一之江での二軒目は、ここ。日本酒がいろいろありそうなので、入ってみた。注文したのは「日本酒飲み比べセット」。これは「獺祭」「田中六五」「麒麟山」「楯野川」「鍋島」「陸奥八仙」「寫楽」「久保田」「花邑」など十数種類から三盃選んで九九〇円、六…

一之江「カネス」

この日は、行ったことのない場所へ行ってみようと、都営新宿線の一之江へ。 幹線道路沿いにはマンション、小道に入るとアパートまたは一戸建の住宅が続く、何の変哲もない郊外の街である。こういう場所がたくさんあるから、東京は人口が多いのだ。少し散歩し…

中目黒「いかり屋」

この日は、恒例の集中講義で聖心女子大学へ。大学周辺には、あまり居酒屋がないことはわかっているので、電車に乗って二駅の中目黒へ向かう。一軒目は、あの名店「藤八」へ行き、絶品のしめ鯖や、名物アリラン漬けなどをいただく。満足して外へ出ると、目の…

御徒町「佐原屋」

ガード下はしご酒、二軒目はここ。御徒町の老舗大衆酒場で、戦後東京のグルメガイドの元祖といっていい『東京いい店うまい店』(一九六七年刊)にも「これこそ勤労者の日々のリクリエーション用の店」として紹介されている。かつては客がそれぞれ外側を向い…

有楽町「登運とん」

思い立って、久しぶりに入ってみた。有楽町から日比谷へ抜けるガード下の名店だ。一九五三年創業という老舗で、もつ焼きともつ煮込みがメイン。このあたりのガードは昌平橋に次いで古い一九一〇年に完成したもので、曲率半径の大きいゆったりしたアーチが実…

「まるよし」

「まるよし」が新装開店したというので、行ってきた。ご覧のように、以前より少し背が高くなっただけで、普通の建て替え。ビルになったわけではなくて、少し安心した。店内も、小上がりがテーブル席になっただけで、あまり変わっていない。 大繁盛しているら…

夏の浅草

この日は、下町散策。とくに目的があるというわけではなく、東京全域に土地勘を持ちたいということで、ときどきやっている。この日は上野駅から出発し、浅草まで歩き、隅田川を渡って本所吾妻橋まで行ってから三ツ目通りを少し南下してから東に進路を変えて…

消えた「樽平」

今日は銀座へ。銀座ライオンの銀座七丁目店で飲んだあと、久しぶりに寄ってみようと金春通りから路地に入る。唖然としてしまった。「樽平」が閉店している。東京の宝ともいうべき名店。一九三一年創業で、この場所に移ったのは一九五二年のこと。戦火を生き…

下板橋「春夏冬家」

東武東上線の下板橋駅に近いこの店、「春夏冬家」と書いて「あきないや」と読ませる。魚料理と日本酒が充実した居酒屋だ。 定番の日本酒は、「八海山」「鳳凰美田」「黒龍」「〆張鶴」「新政」「出羽桜」と堅実だが、季節の「夏の酒」というメニューがあり、…

能登ワイン

この週末は、法事で能登へ。向かう途中で立ち寄ったのが、このワイナリー。かつては外部への委託生産で、甘い土産物ワインばかり造っていたワイナリーだが、いまでは周囲にある三〇ヘクタール近くの畑でベリーA、ヤマソーヴィニョン、シャルドネ、メルロー…

上野「食道楽」

この日は、上野でプチ飲み会。入ったのは、上野駅からアメ横に入ってすぐのこの店。二四時間営業の店だが、酒も料理も充実している。まず日本酒は、日本地図が書かれたメニューに二六種類。北から順番に主だったところを挙げると、男山、愛宕の松、満寿泉、…

板橋「やきとんやんぐ」

「やきとんひなた」系の店が、JR板橋駅近くにできたというので、行ってみた。メニューは、鮮魚の種類がやや少なく、また瓶ビールで定番の赤星のほかにスパドラをおいているが、もつ焼き・もつ煮込みのほかにイタリアンやステーキがあるなど、基本的に「ひな…

中板橋「うおづや」

なんとなく富山の魚が食べたくなった。ネットで調べてみると、最近中板橋に、魚津の魚を食べさせる店ができたらしい。というわけで、訪れたのがこの店。売店を併設していて、アンテナショップ・産直食堂と称するこの店は、中板橋商店街振興組合が運営してい…

御影蔵

どこか居酒屋で原稿のチェックがしたいのだが、まだ日が高い。かといって、「ふくろ」やチェーン店では落ち着かない。どうしたものか。思い立って東武百貨店の上階に行ってみたら、適当な店がある。 何種類かある日本酒は、いずれも菊正宗。大手の酒でも、菊…

東中野「浦野屋 やきとん てるてる 東中野店」

というわけで、もう一軒。「ひなた」系の焼きとんの店である。東中野駅から東中野銀座通りに入って、三分ほど歩いたところにある。 もつ焼き関係とイタリアンが充実していて、魚の刺身は少ないというのは、先日行った高田馬場店と同じ。日本酒が何種類もある…

高田馬場「浦野屋 やきとん てるてる」

「秋元屋系」というか、秋元屋から枝分かれした「ひなた系」の店には、できるだけ行くようにしている。まず裏切られることはない。この店は3年ほど前にできたとのこと。高田馬場駅から西側へ五分ほど歩いたところにある。 メニューは、「ひなた」をほぼ踏襲…

楽酔 久ばら

この店のことは、以前から聞いて知っていたのだが、開店から一年ほど経ったこの日、初めて訪問した。姫路の名酒「龍力」で働いていたというご主人が、お連れ合いと二人で始めた日本酒の店である。 龍力といえば「米のささやき」だろうけれど、逆にいえばこれ…

「まるさん」

ここは池袋西口の近くにある老舗居酒屋。遠い昔に来た記憶があるだけで、ずいぶんご無沙汰だった。 魚料理が中心で、刺身が安くて量が多い。その日のおすすめ三点盛り、この日はマグロぶつ、ブリ、ヒラメの三種類だったが、一人だと多すぎるくらいに盛り込ま…

大阪「木曽路」

この日は講演を頼まれて大阪へ。終わったあとは、当然のように新梅田食道街で居酒屋を物色する。大阪で居酒屋を選ぶときに難しいのは、ビールがアサヒでない店を見つけること。二軒目ならともかく、その日の最初のビールをアサヒにするわけにはいかない。迷…

「やきとんひなた 池袋東口店」

「やきとんひなた」に、池袋店ができたので、開店の2月11日に行ってみた。場所は東口で、ビックカメラ本店の裏通りを、文芸座の前を通り過ぎて突き当たったところ。大きな店だ。厨房を取り囲むカウンター席が12席ほどと、一人客から大人数のグループまで対応…

中野「打越酒場」

中野の早稲田大学エクステンションセンターでやっている社会人向け講座2週目。今日はこの店で飲む。店名は、中野駅北口のこのあたりを昔、打越町と呼んでいたからだろう。 利き酒セットが充実している。刈穂、山本、喜久盛、天明、奈良萬、神亀、大那、想天…

「やきとんだいだら」

池袋初の、秋元屋系もつ焼きの店。秋元屋系では、ひなたグループの「雨ニモマケズ」が池袋にあるが、こちらは高級路線の割烹料理。ひなたから独立した「やきとんだいだら」は東武練馬にあり、沼袋に支店を出しているが、三軒目は何と池袋の立教大学のそば。 …

謹賀新年

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。 最近、すっかり更新が滞っていますが、なんとか週一回更新を目標に続けていきたいと思っていますので、今年も「橋本健二の居酒屋考現学」をよろしくお願いいたします。 写真は、自宅での新年会のオードブ…