橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

消えた「樽平」

classingkenji2017-08-08

今日は銀座へ。銀座ライオンの銀座七丁目店で飲んだあと、久しぶりに寄ってみようと金春通りから路地に入る。唖然としてしまった。「樽平」が閉店している。東京の宝ともいうべき名店。一九三一年創業で、この場所に移ったのは一九五二年のこと。戦火を生きのびた木造一軒家で営業していた。貴重な文化遺産が、また一つ失われた。
初めて入ったのは、もう三〇年ほど前になる。それから頻繁にではないものの、年に一度くらいは訪れてきた。いろいろな思い出がある。この店に通った人なら、必ず何か思い出があるはずだ。これほど多くの人々の記憶にとどめられる店は、そうないだろう。長い間、ありがとう。(2017.8.7)