橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

下北沢「魚真」

魚・愛の店は、下北沢の「魚真」。前回も書いたが、経堂は「魚真」という有名な魚屋があり、この店が経堂周辺の飲食店の魚の味を支えているのだが、その経営する魚料理の店である。魚の種類が多く、安くてうまいので、いつも繁盛している。今年はじめあたり…

魚へんに愛

とある居酒屋でみつけた、不思議な文字。メニューの短冊の間に、さりげなく挟み込まれている。何となく、気持ちはわかる。魚好きたちの好きな魚の良いところを集めたら、こんな名前の魚になるのかもしれない。 これを書いた店の人は知らなかっただろうけれど…

野田「まつ葉」

今日は講演を頼まれて、野田市へ行く。北千住から東武線を乗り継ぎ、自宅を出て2時間後に就いた駅で先方と落ち合い、車で会場の高等学校へ。教員相手の人権問題講座で、近隣の小中学校の先生を含め、二〇人ほどを相手にお話をする。内容は、いつもの格差社会…

柿の白和え

すり鉢で白ごまを摺る。次に水切りした木綿豆腐をつぶして入れ、滑らかになるまで摺り、塩、醤油、味醂で味を調える。そこに拍子木に切った柿を入れて混ぜれば完成。さっと湯がいた椎茸の薄切りを加えれば、旨みが増す。柿は、そのまま食べるには堅いくらい…

「戎参」の生ホッピー:ホッピーよお前もか

三軒茶屋の二軒目は、仲見世商店街の「戎参」へ。前回も書いたが、この店は「精肉店がモツ焼きもはじめたところ、近所の人に好評で、どんどん売り場を広げていってやきとり屋になった」というコンセプトで演出された店。メインの酒が生ホッピーというところ…

三軒茶屋・なかみち街

何日か家でおとなしく仕事をし、そのまま家で食事をしていたのだが、居酒屋欲求が抑えきれず、今日は三軒茶屋へ。行きたい店があったので、まずは「なかみち街」へ。行きたかった店というのは、ブラボー川上と藤木TDCの『続・東京裏路地〈懐〉食紀行』に…

油揚げ、ほうれん草と銀杏の煮びたし

というわけで、昨日、「まきたや」さんでいただいたものを参考に作ってみた料理。まず、昆布と鰹で出汁を取り、酒、醤油、塩で味を調える。ほうれん草はさっとゆでて切っておく。椎茸は薄切り、にんじんは千切り、油揚げは湯通ししてから細切りにする。銀杏…

「まきたや」

今日は、書きかけ原稿のラフスケッチをもって、下高井戸へ。アイデアが煮詰まったときは、居酒屋へ行くに限る。ちょうど、新しい店ができたという情報をキャッチしたところだった。まずは、いつもの「なんで・や」へ行き、ホッピーでのどを潤し、モツ焼き欲…

江古田のあるチェーン店

今日は大学で雑用を済ませ、近所で飲むことにする。一軒目の条件は、「焼鳥とホッピーのある店」。候補はいくつかあるが、ふと思い立って、学生たちと一度入ったことのあるチェーン店へ行く。ホッピーは、氷が入った冷えたジョッキ、小さなグラス入りの焼酎…

スタグフレーション・その2

スタグフレーションとは、物価上昇と不況が共存する現象をいう。経済学の常識では、好況時には物価が上昇し、不況時には物価が下落するものだから、これは単純にいえば理論から外れた現象ということになる。景気の指標としては、失業率が使われることが多い…

奥沢「さいとう」

DAITENさんに二軒目に案内されたのは、焼きとんの店「さいとう」。木造の黒光りした壁、紺色の暖簾に玄関障子、まんまるの赤ちょうちんという、なんとも風格のある外観で、「やきとり さいとう」という大きな白文字だけがやや現代的。中に入ると、少し暗めの…

西小山「八十八」

今日は、居酒屋ブログ「居酒屋探偵DAITENの生活」のDAITENさんと目黒駅で待ち合わせ。東急目黒線沿線の居酒屋を案内していただけるというので、楽しみにしていたのである。DAITENさんは演劇人で、劇団の咲良さん、元哉さんも同行。まず目指したのは、…

銀座「秩父錦」

今日は、高校時代に留学生として在学していたカナダ人の女性と、その夫を迎えてのミニ同窓会。会場は、いろいろ考えて、この「秩父錦」にした。前回も書いたが、この建物は一九二四年に建てられたもので、氷と炭を商う商家の建物だったもの。一九七〇年ごろ…

「天狗」の松茸料理

今日は、妻とその仕事関係の知人である英国人の三人で、「天狗」の東京駅前店へ。この季節になるとメニューに載る、松茸料理を食べさせてやろうという趣向である。松茸料理は二種類で、写真の天ぷら(七一四円)と土瓶蒸し(六〇九円)。天ぷらは野菜の天ぷらと…

サーモンと帆立のウイスキー風味

これは、アイラ島で覚えてきた料理。まず適当な大きさに切ったサーモンと帆立の貝柱をバターでソテーする。焦がさないようにした方が、仕上がりがきれい。今回は彩りを考えて、サヤインゲンをいっしょにソテーした。火が通ったところでアイレイモルト、でき…

「バンチキロウ」

仕事に手間取り、買い物も夕食の支度もできなかった。どこで夕食にしようかと考えたあげく、久しぶりにこの店へ行くことにした。経堂駅の改札を左に出ると、前方にすずらん通りの入り口がある。そこから歩いて一分とかからない。和菓子の「亀屋」の二階にあ…

「エポペ」のパレスチナ・ビール

二軒目は、タクシーで新宿に移動して、歌舞伎町の「エポペ」へ。フランス語で「美しい冒険」という意味だそうで、創業者はフランス人のカトリック神父さんとのこと。落ち着いた雰囲気のレストランバーといった感じで、大きなコの字型カウンターとテーブル席…

「萬屋・おかげさん」

今日は、拙著『居酒屋ほろ酔い考現学』出版の打ち上げで、四谷へ。待ち合わせたのは、毎日新聞社出版局の編集者二人と、記者一人。指定されたこの店は、全国から有名無名取り混ぜて、選りすぐりの日本酒を揃えることで、静かな注目を集めている店らしい。六…

「まるかや本店」

さて、もう一軒、と路地を歩き回る。看板に誘われて細い路地に入ると、蠱惑的な赤ちょうちんと縄暖簾、そしてホッピーの暖簾が。そして、店先に置かれているのは、なんと生ホッピーの樽である。生ビールの樽はよく見かけるが、生ホッピーのものをみたのは初…

「大升」

久しぶりの北千住、二軒目に寄ったのは「大升」。「千住の永見」と同じく、北千住駅の西口から南へ降りたところの飲食店街、ときわ通りにある。コの字型を長く延ばしたカウンター一〇席ちょっとという狭い店だが、メニューが豊富。中心はモツ焼だが、もやし…

「千住の永見」の千寿揚げ

仕事のあと、久しぶりに北千住へ。やはり、三ヶ月の空白のあとはこういう場所にも行かなければという気になる。まさに巡礼といったところか。まずはサッポロラガー(五二〇円)でのどを潤し、注文したのはかつおの刺身と千寿揚げ。千寿揚げは魚のすり身と野菜…

「らかんてい」

経堂駅の北側、商店街からすこし入った住宅地にある。駅前の商店街を左に進み、細い通りに入ったあたりで右手に曲がってすぐなのだが、最初は見つけにくいかもしれない。左側にカウンターが八席ほど、右にテーブルが二卓、奥には座敷がある。魚貝料理が中心…