橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

下北沢「魚真」

classingkenji2008-10-31

魚・愛の店は、下北沢の「魚真」。前回も書いたが、経堂は「魚真」という有名な魚屋があり、この店が経堂周辺の飲食店の魚の味を支えているのだが、その経営する魚料理の店である。魚の種類が多く、安くてうまいので、いつも繁盛している。今年はじめあたりからではないかと思うが、店の外に戸板を立て、テラス席を作った。座席は増えたが、やはりいつも満員。今日は運良く入れたが、あとからきた人は待たされている。
七種類ほど入った刺身盛り合わせが普通盛(一五〇〇円)、いいとこ盛(二二〇〇円)と二種類あり、いいとこ盛だとマグロが中とろになって、ウニなど高めのネタがつく。どれも間違いなくうまい。いろんな魚が混ざったアラ煮は、たったの一〇〇円。高級魚の部類に入る甘鯛の塩焼きがたったの九八〇円で、これなら店で買うより安い。サザエブルゴーニュバタ焼(六八〇円)は、サザエを殻のまま香草とバターで壺焼きにしたもの。いついっても、食べたいものが多すぎて困ってしまう。日本酒も一〇種類ほどあり、一合入りの大きなぐい飲みにたっぷり注いで五五〇円から八五〇円。
店内は活気にあふれている。店員もきびきび働き、かけ声が響き渡る。客は、山の手住宅地の中高年と、少しリッチめの若者が共存する。くつろいでしみじみ飲みたいというような時は別だが、魚専門の居酒屋としては都内有数といっていい。下北沢の南口を出てまっすぐ坂を下り、餃子の王将のところで左に曲がった道路の左側。渋谷や乃木坂、吉祥寺など、系列店が一〇店ほどある。(2008.10.25)

世田谷区北沢2-1-1 つばさマンション1F
17:00〜24:30 無休(お盆・正月休みあり)
http://www.uoshins.com/