橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「さしあげ亭」

池袋には昔からの富山料理の店があったはずだが、閉店したようだ。いま残っているのは、この店。開店がいつだったかわからないが、さほど古い店ではない。 新宿とここの二店だと思うが、厨房は奥にあり、バイトの店員が運んでくるスタイルで、雰囲気はチェー…

「日南市じとっこ組合 世田谷経堂店」

みやざき地頭鶏を看板に掲げるチェーン店。存在は前から知っていたが、今日初めて入った。 解説によると、みやざき地頭鶏とは天然記念物の地頭鶏の雑種第二代とのこと。炭火焼き(中一二八〇円、大一九八〇円)を注文すると、底が浅めの網籠のような網を炭火に…

久住昌之『昼のセント酒』

名作の誉れ高いマンガ『孤独のグルメ』だが、主人公の井之頭五郎は酒を飲まない。だから、何となく原作者の久住昌之も酒を飲まないものと思っていたら、実は酒好きらしい。本書は作者が、東京のあちこち(第六話だけは北海道だが)を散策したあと、銭湯に入り…

藤木TDC『昭和酒場を歩く──東京盛り場今昔探訪』

休刊になってしまった『荷風!』は、いい雑誌だった。アカデミックな香りが強い『東京人』とは対照的に、猥雑な盛り場性を濃厚に湛えた本の造りが魅力的で、号によってややムラがあったとはいえ、十分な情報量があり、読み応えがあった。なかでも藤木TDCの書…

デフレに、格差に、ノスタルジー。

19日のDIGは、『デフレに、格差に、ノスタルジー。居酒屋から見えるニッポンの現代!』というタイトルでした。藤木TDCさん、倉嶋紀和子さんと、CMなしで一時間、たっぷりお話しさせていただきました。podcastも配信されています。公開は放送後一週間らしいの…

TBSラジオのDIGに出演します。

今夜、TBSラジオのDIGという番組に出演します。テーマは「居酒屋から見える現代」で、対談相手はルポライターの藤木TDSさんと、『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さん。放送時間は午後10時〜11時53分ですが、出演するのは10時25分頃〜11時25分頃です。生放送で…

浅草「酒の大枡・雷門店」

昼酒の二軒目は、ここにした。基本は酒販店だが、横にバーコーナーがあって、日本酒を数十種類から選んで飲むことができ、簡単な肴も出す。貼り紙に「春のぬる燗フェア」とあり、出羽桜の桜花吟醸を燗で出すというので、いただいてみた。もともと淡麗な酒だ…

浅草「神谷バー」

というわけで、向かったのはここ。正月には入れなかったので、再挑戦というわけである。まずは生ビール。ここはスーパードライだが、郷では郷に従え。やむを得ない。 次にいただいたのは、このアサヒスタウト。スタウトとは元来、英国風の上面発酵させた濃色…

浅草寺・伝法院

新学期が始まる前の、つかの間の休日ということで、浅草へ。 東京中が廃墟と化した関東大震災の時、浅草寺はほぼ無事だった。さすが浅草寺は御利益があると讃えられたが、東京大空襲では本堂・五重塔など大半が消失する。大きな建物で唯一焼け残ったのが、伝…

西荻窪「仙の孫」

この日は、退職する教員の送別会で西荻窪へ。なぜ大学から遠く離れたこんな場所になったかというと、退職する教員のなかに、どうしても東日本の食材は食べたくないというわがままな人がいたから。この店は、食材の出所がはっきりしていて、野菜は大分産の有…

石神井川の夜桜と「やきとん万備」

今年も、石神井川の桜を見に行った。私のいちばん好きな花見スポットである。なかでも私が好きなのは、都営三田線板橋駅から東武東上線中板橋の間の流域。水面が護岸のかなり下にあって、川の両岸から枝が伸び、まるで渓谷の桜のような景観である。少し露出…

今年の花見酒

今年も、砧公園で花見酒をした。朝の気温はわずか四度で、午後になっても十二度までしか上がらない。しかも曇りで、冷たい風が吹く。花見酒を始めた時は、あまりの寒さに二、三杯で帰ろうかと思ったが、飲むうちに気分がよくなり、けっこう長居をしてしまっ…

桜台「秋元屋」

科研費のプロジェクトで十数人の学生にアルバイトを頼んでいたが、年度も終わり卒業する学生もいるので、打ち上げをすることに。連日超満員のこの店に九人も入るのは難しいということで、開店直前に電話を入れて席を確保。ほぼ開店とともになだれ込んだ。お…

浦和「おがわ」

太田和彦の居酒屋紀行をプロデューサーとして担当していた小川洋一さんが、昨年一一月に開いた店。もうあちこちで話題になっているが、私は初めての訪問。 名店となるべくして生まれた店といっていい。何しろ、全国の名店を知り尽くした人が満を持して開いた…