橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

浅草「神谷バー」

classingkenji2012-04-16

というわけで、向かったのはここ。正月には入れなかったので、再挑戦というわけである。まずは生ビール。ここはスーパードライだが、郷では郷に従え。やむを得ない。
次にいただいたのは、このアサヒスタウト。スタウトとは元来、英国風の上面発酵させた濃色ビールで、ホップより焦がした大麦の苦みが強いところに特色がある。日本にもスタウトと称するビールがいくつかあるが、その製法はまちまちである。キリンの一番絞りスタウトは下面発酵のシュバルツビアに近いし、サッポロのヱビススタウトは同じく下面発酵だが、ギネスのようなクリーミーな泡を出すために、おそらく小麦を加えているように思う。これに対してアサヒスタウトは、伝統的な上面発酵で、しかも麦汁濃度の高いインペリアルスタウトというスタイルになる。深いコクと、ドライフルーツのような甘味。悪魔に魂を売ったとしか思えないこのビール会社の、最後の良心ともいうべき製品である。かつて八重洲にあった「灘コロンビア」というビアホールでは、時期限定でこのビールの樽生が飲めたが、それは恐ろしいほどうまいビールだった。
料理は、串カツ、マグロのぬたなど、下町風のものをいただき、デンキブランも飲んで、さて次の店を探すか。(2012.4.4)

台東区浅草1丁目1番1号 
11:30-22:00 火休