橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2009-01-01から1年間の記事一覧

伏見「鳥せい本店」

オフ会の二軒目、というよりメイン会場はこの店。有名店だが、私は初めて。何とも風格ある店構えで、中はかなり広い。空席はあるのだが、注文の集中を避けるためか席の準備に少し時間をとっているようで、五分ほど待たされる。待合席の周辺には、伏見ガイド…

伏見「藤岡酒造」「熊谷豆腐店」

午前中に仕事を済ませた後、京阪電車で伏見へ。今日は、私が店主を務めるバーチャル居酒屋「とり橋」の関西オフ会である。集まったのは、Liさん、紫式部さんのお二人。Liさんは約二年ぶり。紫式部さんは私の高校の後輩なのだが、卒業以来だから何と三二…

橋本健二 meets 橋本健二さん

今日は仕事で大阪へ。仕事は翌朝だが、少し早めに出て、以前から連絡を取り合っていた建築家の橋本健二さんと大阪駅で待ち合わせる。向かったのは、「こぶた」という店。名物は羊の料理で、骨付き肉のローストが絶品。ただし、駅からタクシーで行き、ホテル…

朝日新聞書評

今日は自著の宣伝です。朝日新聞に書評が載りました。ここまで絶賛されると、ちょっと気恥ずかしいのですが、意を尽くした内容でわが意を得たりというところです。全文は、下のリンクから読めます。 http://book.asahi.com/review/TKY200912220204.html 「格…

「まるはち商店」

二軒目は、すぐ裏手にあるこの店。レトロ風味の店構えとインテリアだが、最近できた立ち飲み屋である。左側にカウンター、右と奥にテーブルがあり、詰めれば三〇人近く入れるだろう。生ビール(スパドラ)が三五〇円と安い。ホッピーは四〇〇円(中二〇〇円)、…

「かんちゃん」

新宿西口のビックカメラ裏手あたりは、古い居酒屋が多い。思い出横丁は、戦争直後あるいは五〇年代から時間が止まったような雰囲気であるのに対して、このあたりは高度成長期の雰囲気が漂う。そのうちの一軒が、ここだ。 玄関脇には、ボロボロになった古いち…

太田和彦『ひとり旅ひとり酒』

太田和彦の最新著。『西の旅』という旅行雑誌での連載をまとめたとのことで、金沢、境港、和歌山、広島、松江、長崎、高知など、西日本の地方都市を飲み歩くという趣向。編集者とカメラマンが同行しているはずだから、ひとり旅というのはちょっと違うと思う…

表参道「中西」

今日はNHK出版からの依頼で、対談のため表参道へ。対談相手は、明治学院大の原武史さん。司会は、東大の北田暁大さん。テーマは都市論で、東京の都市の格差や階級構造、郊外化と団地の社会的・政治的機能などについて、二時間ほどお話しする。来年二月発売の…

80万カウント御礼

昨日の深夜、80万カウントに達したようです。迂闊でした。80万カウントをゲットした人に新著進呈でも……と考えていたのですが。100万カウントの時には、何か企画したいと思います。

鳩山・宇ち多へ行く

首相日々:12日 ◇午後 5時 9分 東京・立石の立石仲見世商店街。 38分 同商店街の居酒屋「もつ焼 宇ち多」。仙谷由人行政刷新担当相、松井孝治官房副長官、中山義活首相補佐官らと食事。

「トラノコ」

寒い屋外で飲んでいたので、地下街に入るとほっとする。入ったのは、靖国通りの地下にある新宿サブナード。めったに来ない場所だ。ここを通り抜けて東口方面でどこか店を探そうと思っていたのだが、何とこの地下街に直結したビルの地下に、場違いな雰囲気を…

「モッツマン」

ここしばらくの間、仕事や雑用が多く、外で飲むことが少なかった。今日は大学の帰り道、以前から気になっていたこの店へ。本店は新宿区役所の近くにあるが、私がいったのは、西武新宿駅そばの支店。七時前だというのにほぼ満員で、店員が「オモテでいいです…

「第二宝来家」

「シャンソンとどぶろく」イベントの後は、新宿へ移動。同窓会をやっていた四年ほど前の卒業生と合流し、思い出横丁へ。こういうときには、やはり安心して飲める「第二宝来家」だ。ここは以前も取り上げたことがあるが、先代の金子正巳さんが敗戦直後に始め…

シャンソンとどぶろくの夕べ

今日は、「シャンソンとどぶろくの夕べ」というイベントに招待されて、有楽町へ。これは先日紹介した阿部健さんの『どぶろくと女』という快著の出版記念パーティー。会場は、外国特派員協会のホールで、業界関係者、マスコミ関係者などを含めて五〇人ほどが…

川本三郎『きのふの東京、けふの東京』

『東京人』、『荷風!』、『東京新聞』。これは東京論三大メディアともいうべきもので、私はいずれも愛読している。この三つに共通の常連著者、というより看板著者の一人が、わが敬愛する川本三郎。川本には多数の著作があるが、本書はそのなかでも出色とい…

かぶら寿し

金沢の冬の味覚だ。大きなかぶをスライスして、塩漬けにしたブリの切り身を挟み込み、麹で漬け込んだもの。繊細にして豊潤。ボディのある加賀の酒にも合うが、繊細さを生かすなら新潟や東北あたりの純米吟醸とも相性がいい。楽天で売っているのは、私の同級…

「三兵酒店」

三軒目は、池袋では有名な角打ちの名店へ。ちっょと見ると普通の酒屋だが、向かって右側に立飲みコーナーがあり、格安で飲むことができる。日本酒と焼酎は二二〇円からで、純米吟醸は三一〇円。ビール大瓶が四一〇円、サワー類は二七〇円から、スコッチウイ…

「豊田屋 三号店」

そろそろ暗くなってきた。二軒目をさがそう。もつ焼が食べたい。老舗の豊田屋へ行ってみることにしよう。この夏には一号店へ行ったが、今日は三号店だ。 もつ焼きは、たん、はつ、かしら、しろ、レバー、なんこつとあり、二本二五二円。五本盛り合わせなら六…

古典酒場責任編集『つまみで選ぶ、今夜のうまい店』

ムック『古典酒場』の総集編的な企画だが、今回は料理に焦点を当てての編集。全体が、やきとん・やきとり、煮込み、おでん・なべ、さかな、いろいろ、個性派、と分けられている。巻末には、例の居酒屋ブロガー座談会の三回分をつなげ、未掲載分も含めてまと…

「ふくろ」

今日は営業活動で、埼玉の新座へ。高校生相手に授業をして、帰りは近くの志木ニュータウンを通って柳瀬川駅へ。総戸数三〇〇〇以上の高層集合住宅で、人口は一万人近くにもなるはずだが、人通りは少なく、不思議なほどひっそりしている。商店街も、閉店した…

海の幸のサラダ・トリュフソース

日本人にあまりなじみのない食材のひとつが、トリュフだ。丸のままだと手に入りにくいし、高い。しかし瓶詰めのソースならさほど高くはないし、使いやすい。いちばん簡単で美味しく仕上がるのは、ホタテや白身魚をバターでソテーし、トリュフソースを加え、…

「炭火焼 Ken坊」

この不況だというのに、経堂の西通りには、新しい店のオープンが続いている。この店も、できたばかりの店。かつて「ぼんぞ」というラーメン屋兼ロックバーがあった場所だ。洋風のインテリアで、カウンターとテーブルがある。 店先の看板に「串に刺ささない、…

阿部健『どぶろくと女』

著者は酒のマーケティングと酒文化の普及に、長年携わってきた人物。その経験と蓄積に加え、退職後の十数年を費やして資料・文献を渉猟し、まとめたのが本書である。全六二九ページ、目次だけでも一二ページという大冊だ。 記述は縄文期に始まり、万葉の時代…

中井「楽屋」

中井駅のすぐそば、踏切に面した場所、ちょっと雑然とした雰囲気の入り口から階段が二階へと続いている。貼り紙には「中井駅にいちばん近い居酒屋です。ワンコイン以下のお酒各種、酒菜40品目以上。区内町御用達 酒菜研究所」とある。 階段を上ってみると、…

中井「鳥香」

今日は、ふと思い立って、帰り道に中井で降りてみる。通勤で使っている地下鉄大江戸線だが、西武線に乗り換えて野方の「秋元屋」へ行こうかなどということでもない限り、ここで降りることはなかった。西武線の踏切の周辺に、少し賑やかな商店街があり、心惹…

友里征耶『グルメの嘘』

著者は「激辛」グルメライターとして知られる人物。批判された料理店関係者が大勢で自宅に乗り込んできたり、家族への危害をほのめかして脅迫されたりしたこともあるという。その激辛ぶりは、「友里征耶の行っていい店わるい店」で知ることができる。とくに…

板橋「松月」

JR板橋駅を東口に出て、左へ。線路脇の小径に入ったところが、前回紹介したバラック飲食店街だが、そこを通り抜けると少し広い道に出る。これが旧中山道で、左側の踏切を渡って歩くと、かつて板橋宿のあった長い商店街に出る。右側へ行ってもやはり商店街で…

板橋「隗」

JR板橋駅の東側は、かつて大規模なヤミ市があった場所で、駅前ロータリーの周辺に、当時の面影を残す飲食店街がある。これに対して西側は、比較的落ち着いた雰囲気だが、線路にへばりつくようにバラック飲食店街が残されている。 「飲み物 つまみ 全品100円…

板橋「北海」

ときどき里心がついて、板橋へ行きたくなる。なにしろ、二〇年近くも住んだ場所だ。第二の故郷という言葉があるが、実際には故郷よりずっと長く住んでいるから、私にとっての重みは、むしろこちらの方が大きい。先日(「まつや」、「明星」)は出版社の編集者…

「ガヤガ屋」

いつもと違った道から帰ってみる。小田急線の南側、少し遠回りになるが、このあたりにもいろいろ店がある。駅から線路沿いに西方向へ二分ほど歩いたところ、新しい店ができている。これだから、たまには通ってみないと。 店の名は「ガヤガ屋」という。和紙を…