橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

新宿「ビアホール ライオン 新宿ライオン会館店」

classingkenji2009-07-09

銀座三越裏あたりにある新宿ライオン会館は、東京のライオンチェーンの中では、おそらく銀座七丁目店に次ぐ規模である。上階には和食やエスニック、ピザなどの店もあるが、一階と地下一階がオーソドックスなビアホール。今日、ポスターで知ったのだが、この店は一九三九年開店とのこと。戦前の新宿で、どんな人々が生ビールを飲んでいたことか。私鉄沿線のサラリーマン、早稲田などの学生たち、当時の写真が残っていれば、みたいものだ。
今日、ここを訪れたのは、新製品のスタウトビールを飲むため。まず一階に入ったのだが、メニューにない。店員に聞くと、地階にしかないのだという。仕方がないので注文せずに席を立ち、地階へ行く。少々待たされたが、一〇分ほどで席が空く。
そのスタウトが、これ。名前を「ヱビス・スタウト・クリーミートップ」という。泡はきめ細かいが、ギネスには到底及ばない。色は、スタウトにしてはやや薄い。味はというと、従来からあるヱビス・ブラックに近く、エステル香はあまり感じない。おそらくは、下面発酵で作られた黒ビールの一種ではないだろうか。どうも典型的なスタウトとはいいかねるようだ。もっとも美味ければ下面発酵でも上面発酵でもいいのだが、ロースト香が弱いのが物足りない。
というわけで少々期待はずれだが、考えてみると、これまで国産の「スタウト」と称するビールは、どれも本来のスタウトとはかけ離れたものだった。典型的なスタウトではなく、キャッチにもある通り「ジャパニーズ・スタウト」と考えれば、これはこれで存在意義はあるのだろう。業務用の樽で供給されているらしいので、いずれあちこちに出てくるだろう。(2009.7.3)

新宿区新宿3-28-9 新宿ライオン会館 B1・1F
月〜木 11:30〜23:00
金・土・祝前 11:30〜23:30
日・祝 11:30〜22:00 無休