橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2014-01-01から1年間の記事一覧

『東京人』2015年2月号

今回の特集は、「日本酒」。 私も登場して、池袋の名酒居酒屋を紹介しています。ご一読を。東京人 2015年 02月号 [雑誌]作者: 都市出版出版社/メーカー: 都市出版発売日: 2014/12/29メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る

土田美登世『やきとりと日本人』

やきとりは、私の居酒屋考現学にとっても重要な研究対象であり、拙著『居酒屋ほろ酔い考現学』でも一章をあてて論じている。ところが今度は、やきとりとやきとり屋の歴史から、調理法、素材、そしてやきとり屋の現況まで論じてみせた一冊が現われた。とくに…

椎名町「やきとん 博多屋」

先日の「四文屋」に続いて、椎名町に開店したもつ焼きの店。「やまちゃん」とあわせて、この道沿いの近いところに三軒が並ぶことになった。 一串の値段は、一部を除いて一〇〇−一五〇円。焼きとりもあって、こちらは九〇−一五〇円。一品料理も、普通の居酒屋…

『居酒屋ほろ酔い考現学』

二〇〇八年に出版した『居酒屋ほろ酔い考現学』が、文庫本になりました。私としては、初の文庫本になります。内容はほとんど同じですが、所得階層別の飲酒代、酒の消費額などのデータは、最新のものにしてあります。格差拡大による酒消費の二極化傾向は、ま…

飯野亮一『居酒屋の誕生──江戸の呑みだおれ文化』

これは、居酒屋に関する初の本格的な歴史書といっていい。断片的な情報を集めたものではない。江戸期の文献を幅広く渉猟し、江戸期における居酒屋の全体像を描いている。これはひとつの偉業である。 居酒屋の起源についてしばしば言われるのは、江戸は労働者…

「トルコアズ」

池袋にはかつて、老舗のトルコ料理店「カッパドキア」があって、私が初めてトルコ料理に目ざめたのはこの店だった。しかし、場所が悪かったのかすでに閉店。この日向かったのは、この店である。実は以前、ランチを食べに行ったことがあって、乾いてパサパサ…

椎名町「四文屋」

椎名町に「四文屋」が開店した。焼きとり、焼とん、焼ぎゅうと三種類揃った業態で、メニューと値段は、もちろん他店と共通。住宅地だけに、表の看板には「おもちかえり やっています」を前面に出している。 さっそく入ってみたが、六時頃という時間の割には…

神保町「源来酒家」

この日は菱田春草展を見に竹橋へ行き、帰りはこの店へ。昔からときどき来ている中華料理店である。かつては日教組御用達の店で、役員たちと何度か来たことがある。 中華料理といっても、ここの料理は上海の近くの寧波という土地の料理で、薄味の味付け。とく…

大本泉『作家のごちそう帖』

近代日本の作家たちの、食をめぐるエピソードを集めた本なのだが、この種の本にしては酒に関するエピソードが比較的多いから、ここで紹介してもいいだろう。 夫の鉄幹は下戸だったらしいが、与謝野晶子は酒好きで、寝る前にコップ一杯の冷酒を楽しそうに飲む…

浅草「駒形どぜう」

この日は、浅草へ。この店に入ったのは、何年ぶりだろうか。店先で順番を待っている人が十数人いたが、大店だからさほどは待たされない。二階の座敷は、畳敷きのまま、椅子席になっている。テーブルの間隔が十分とってあるので、居心地がいい。 名物のどぜう…

要町「The Cat & Cask Tavern」

要町の住宅街のなかに見つけたタバーン、ラフにいえばイングリッシュ・パブである。英国人の男性と日本人女性の夫婦が営む小さな店で、小さなカウンターに席が四つと、テーブルが二つ。席数を抑えているので、ゆったり感がある。立ち呑みカウンターこそない…

「晩杯屋 大山店」

いま評判の立ち飲み屋の、一年前にできた大山店。赤羽の名店「いこい」で修行した人が始めたとのことで、店内には「いこい」のTシャツが飾られている。壁に貼られた飲み物メニューのデザインは、「いこい」とそっくり。ホッピーセット三七〇円、中二二〇円…

地酒ブームと酒ジャーナリズム

一九七五年ごろから始まった地酒ブームをさらに加速したのは、酒ジャーナリズムともいうべきスタンスを前面に出した、一連の出版物だった。その始まりは、稲垣眞美の『ほんものの日本酒選び』(三一書房・一九七七年)である。 この本は、稲垣の個人的なエピソ…

ファミレスのフォアグラ

ファミレスが、相次いでフォアグラをメニューに取り入れている。なかなか食べることのできない、そもそも日本では手に入れるのも難しい高級食材だが、ファミレスで食べるその味は? というわけで、近所の「ジョナサン」へ行ってきた。フォアグラが二枚載った…

「ビーボ」

池袋は名酒居酒屋の聖地といえるが、クラフトビールの店も多い。ここは、その一軒。東口を出て、ヤマダ電機の右側をまっすぐ進んだところの、スタバの地下にある。 国内と主にアメリカのクラフトビールを、樽生で二〇種類ほど。軽井沢よなよな、ベアード、富…

『東京人』2014年10月号

月刊誌の『東京人』、今回のテーマは「大吉祥寺圏を遊ぶ」。吉祥寺を広くとり、中央線では西荻窪から武蔵境まで、南は深大寺までを取り上げた特集です。このなかに「酒場」という一文があり、私が書いています。ご笑覧を。東京人 2014年 10月号 [雑誌]出版社…

吉祥寺「PLAT STAND 酛」

日本酒好きに大人気の新宿「酛」の三号店として、一年半ほど前に開店した立ち飲みが基本の日本酒バー。一号店と同様、日本酒の品揃えが素晴しい。「而今」「山形正宗」「貴」「若波」「七田」「川鶴」「花陽浴」「風の森」「鳳凰美田」など、新世代の名酒が…

吉祥寺「吟の杜」

吉祥寺には、美味い日本酒、それも新世代の純米酒を出す店があまりないと思っていたら、ここ一、二年の間に相次いで開店した。この店はその一つで、今年二月にオープンしたばかり。カウンターの向かいの保冷庫には、「残草蓬莱」「風の森」など。置いている…

吉祥寺「千尋」

この日は、吉祥寺へ。まず入ってみたのは、この店。以前から存在は知っていたが、地元民一〇〇パーセントの雰囲気に気押されて、これまで入ったことがなかった。 古い店だ。聞けば、一九六八年創業とのこと。堂々たる概観で、内装も当時のままだという。駅の…

「立ち呑み割烹 そら」

池袋に最近できた、立ち飲みの店。立ち飲みといっても、ちゃんとした日本料理を出す「立ち呑み割烹」である。 まずお通しは、小さな茶碗蒸しと、本マグロのカルパッチョで、見た目も品がよく、美味しい。ビールは、プレミアムモルツで、ピルスナーグラス四五…

本郷「皐月」

この日は、東大の社会科学研究所で、古い調査資料をデジタルカメラで撮影する作業をする。学生を一人連れて、三脚を二本立て、一枚一枚撮影。最近のデジタルカメラは解像度が高いので、数十センチの距離からの接写だと、肉眼で見えない部分まではっきりと写…

立石「秀」

京成線でここまで来たからには、立石にも寄らなければ。立石の街をひととおり徘徊した後、行ってみたのは、この店。立石は日曜休みの店が少なくないけれど、ここはモツ焼系の店で日曜営業の代表格だろう。 まずは豚モツ刺身三点盛り(五〇〇円)と、ハイボール…

八広「丸好」

この日は、なぜか立石の「二毛作」で飲みたいと思い立ち、出かけたはいいのだが、途中でfacebookをチェックすると、宇ち中さんの書き込みで臨時休業であることが判明。そこで目的地を変更し、移転・改装した四ツ木の「えびす」へ行ってみたのたが、残念なこ…

地酒ブームの到来

「地酒」という言葉は、今ではあまり使われなくなった。全国各地に優れた日本酒を造る小さな酒蔵が数多くあることは、すでに常識化している。名の知れた酒も多いし、蔵元と熱心な酒販店などの努力により、少ないながらも全国的に流通するようになっている。…

「銀座ライオン 銀座七丁目店」

銀座の松坂屋が建て替え工事中である。このため、狭い通りを挟んだ向こう側の、銀座ライオン銀座七丁目ビルの側面がよく見える。一九三四年竣工、菅原栄蔵設計の名建築だが、普段はほぼ正面しかみることがない。こうしてみると、六階の会議室部分に細かい装…

三軒茶屋夕景

三軒茶屋の変貌が著しい。かつては寂れかけていた、ヤミ市に起源をもつ商店街・通称「三角地帯」だが、新規の店がたくさんできて、賑わっている。若者も多い。吉祥寺のハモニカ横丁に続く、ヤミ市飲食店街の復興である。こんな例が、さらにあちこちにできて…

「きくや」

ちょっと必要があって、居酒屋街の写真を撮り歩いている。この日訪れたのは、下北沢と新宿。いずれも、池袋に引っ越してからはご無沙汰が続いている。 下北沢では「さかえ」へ。抜群というわけではないが、安定したもつ焼きの味。大衆的でありながら、どこか…

日本酒フェア2014

今年も池袋のサンシャイン60で開催された日本酒フェア。午後の部に参加してきた。まずは、全国新酒鑑評会受賞酒の公開利き酒会から。開会直後に行ったのだが、会場は長蛇の列で、だいぶ待たされた。会場が狭いのかと思ったら、そんなことはない。広い会場は…

要町「オステリア・ペルノ」

近所にはイタリアンが少ない。ネットで探して、見つけたのがこの店だ。要町の交差点から、徒歩一分くらいのところにある。 メニューに載っているワインは、泡が一種類、白が二種類、赤が四種類。グラスは七〇〇円から一四〇〇円、ボトルは三〇〇〇円から六五…

椎名町「やまちゃん」

椎名町に最近できた、やきとんの店。やきとんのメニュー見ると、かしら、かしらあぶら、から始まって、ちれ、半焼きちれ、あぶらなどが並ぶ。サイドメニューは、キャベツみそ、山芋しょうゆ漬け、がつ酢など。そして飲み物は、サッポロラガー、ホッピー(シャ…