橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

常磐線沿線

松戸「鳥孝」

「松戸酒場」で常連客たちが話題にしていたのを聞いて、相当の老舗らしいと知ったのが、この店。一見すると居酒屋というより料理屋のようにも見えるが、れっきとした大衆酒場である。白地に「鳥孝」と書かれた暖簾をくぐると、八人掛けのテーブルが三卓。数…

松戸「松戸酒場」

ふと思い立って、松戸へ行ってみた。表向きの目的は、松戸市立博物館と常磐平団地の見学。常磐平団地は、一九五九年に入居が始まった巨大団地で、総戸数は五三〇〇。多くの団地で建て替えが進む中、自治会が一致団結して建て替えを拒否し、高齢化に取り組む…

金町「ブウちゃん」

本日のしめくくりは、この店。金町駅南口の前の通りを、亀有方向に少し戻った場所で、赤いテント看板が目立つので、すぐ分かる。 店内は長いコの字型カウンターのみで、二五人くらい入れるだろうか。ちょっと雑然とした雰囲気だが、下町らしいゆるやかな活気…

金町「深川酒場」

この店については、外観を紹介するにとどめておく。中は明るいインテリアの普通の店なのだが、名前といい、暖簾の太文字といい、看板にちょうちんといい、下町大衆酒場好きには堪えられない店構えである。興味のある人は、探してみてください。

金町「ゑびす」

「大渕」のある居酒屋通りから駅の方に戻る。駅前は再開発が進行中で、更地になっている場所もある。そのすぐ近くにあるのが、この店。コの字型カウンター一五席だけの小さな店で、六〇過ぎかと思われる夫婦が切り盛りしている。カウンターの下に「天羽乃梅…

金町「大渕」

今日は、ふと思い立って金町へ。先日読んだ『みひらん 東京下町沿線編』に影響されて、小岩と並んで東京二三区最東端のこの町を訪れてみたくなったのである。大学から池袋へ出て、山手線で西日暮里まで行き、千代田線に乗り換える。六駅目が金町だから、そう…

亀有「江戸っ子」「加賀廣」

千代田線に乗って亀有へ。ここは、学生時代に六年間ほど住んだ場所である。貧乏学生のくせに本だけはたくさん持っていたので、本棚がいくつも置ける広い板の間があって、家賃の安いアパートを探した結果、必然的にここに落ち着いたというわけである。駅前は…