橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

赤羽

「まるよし」

「まるよし」が新装開店したというので、行ってきた。ご覧のように、以前より少し背が高くなっただけで、普通の建て替え。ビルになったわけではなくて、少し安心した。店内も、小上がりがテーブル席になっただけで、あまり変わっていない。 大繁盛しているら…

「東京バル」の丸真正宗

この日は一仕事が終わったので、思い立って、明るいうちから赤羽へ行くことにする。一軒目は、当然のように「まるます家」。平日の四時過ぎだから、行列というほどではない。三分ほど待って、カウンターいちばん奥の特等席に座ることができた。鯉の洗い、バ…

八起

赤羽で「まるます家」の次に好きな店が三軒ほどあるが、ここはそのひとつ。東京の数ある横丁のなかでも、もっとも成熟した雰囲気のOK横丁のなかほどにある名店だ。 店は大きい。一階は長大な対向カウンターとテーブル席。二階にもテーブルや小上がりがある…

「まるます家」

久しぶりにやって来た。まだ明るいうちから、行列ができている。周囲の商店街も、活気がある。居酒屋が、ますます増えている。一軒の居酒屋が商店街に人を呼び込み、商店街を活性化させたという、奇跡のような現実。行列だと行っても、客の回転は比較的速い…

「まるます家」

この日は、まあまあ天気がよかったこともあり、午後からカメラをもって出かけることにした。 まずは、上野へ。御徒町で降りて不忍池へ。ここで下町風俗資料館を見学。深川江戸資料館ほど規模は大きくないが、江戸の長屋が再現されているところ。上野のついで…

「まるます家」

というわけで、慰労会はここ、「まるます家」の二階。あいかわらず、満員盛況である。それだけではない。以前から「まるます家」の周辺は居酒屋を初めとする飲食店の開業が続いていたが、さらに拍車がかかり、古い寂れかけた洋品店や雑貨屋などが衣替えして…

東京バル

今日は、約三年の呉勤務を終えて東京に戻ってきた浜田信郎さんの慰労会で、赤羽へ。少し時間があったので、一人〇次会ということで立ち寄ったのが、この店。 カウンター席と立ち飲みテーブルを揃えた、おしゃれな感じのバルで、店名から見るとチェーン店のよ…

「八起」

今日は、ヤミ市研究会で東大工学部へ。この研究会、私以外は全員建築史が専門で、徹底的に資料を収集する、その実証精神には頭が下がる。さらに、プレゼンがうまい。パワーポイントのスライドなど、うまくレイアウトされていて、たいへん参考になる。 研究会…

「丸健水産」

この三人が、座談会が終わったからといって、おめおめ帰るはずがない。二軒目はOK横丁の「八起」へ行き、三軒目はここ。市場の裏にある、立飲みのおでん屋である。酒は地元の丸眞正宗コップ酒。 連休に赤羽まで出てきて酒を飲もうという人は、たいてい吉田…

座談会 in 「まるます家」

今日は、KKベストセラーズから出版される『TOKYO大衆酒場』の座談会で、赤羽へ。メンバーは、吉田類さん、浜田信郎さん、そして私の三人である。最初は一階のテーブル席で、ビール片手に話をしているところを写真に撮り、そのあと二階の座敷に移動して話を続…

「かしら屋」

今日は出版社の編集者と飲む予定だったが、大学での雑用が思ったより早く終わり、1時間半ばかり空き時間ができてしまったので、赤羽で時間をつぶすことにする。ちょうど、衆議院選挙も大詰め。東京十二区が大変なことになっているらしいので、見物も兼ねてと…

「まるます家」と一番街商店街

仕事に、一区切りがついた。今週に入ってから、エッセイを一本、論文を一本、そしていま書いている本の章をひとつ書き終えた。快調なペースともいえるが、なにしろ全体が一ヶ月ほど遅れている。それでも気分転換は必要だ。それに明日は雨だというし。という…

「いこい」

こうなると、もう一軒行っておきたいのは、立ち飲みの「いこい」である。 もともと立ち飲み屋には、大別して二種類がある。ひとつは、酒販店が店頭で、缶詰や乾き物などの簡単なつまみとともに酒を売り、グラスといっしょに客に渡すもので、「角打ち」と呼ぶ…

「弥生」

OK横丁にあって、いちばん落ち着いた雰囲気の居酒屋が、ここ。中は、コの字型カウンターに一二席ほどがあるだけ。カウンターの前に溝が作ってあり、氷水の中でビール(大瓶五五〇円)が冷えている。銘柄は一通り揃っていて、客は自分で選んで栓を抜く。ビール…

OK横丁

赤羽駅東口には、東京近郊でも有数の規模のヤミ市があった。いまでも当時の雰囲気を色濃く残すのは、一番街の東側にあり、間口の狭い商店が密集する「一番街シルクロード」、そして線路よりの飲食店街「OK横丁」である。OK横丁にはもつ焼き・もつ料理の「八…

「トロ函」

「のんき」を出て、OK横丁から「まるます家」の横を通って一番街に入る。目に飛び込んできたのが「赤羽 トロ函」と大書された白い看板だ。以前、小岩の「トロ函」には行ったけれど、赤羽にも進出するとは驚き。しかも、「まるます家」の隣というベストポジシ…

「堀切のんき 赤羽店」

堀切菖蒲園に「のんき」という、もつ焼きの名店がある。実は私、まだ行ったことがないのだが、のれん分けした店が赤羽にできたという。二軒目はそこに行ってみることにする。まだ五時半頃なので、今日は私が最初の客。まずは、元祖下町ハイボール(二九〇円)…

「まるよし」

今日は、大学の雑用が早く終わったので、久しぶりに赤羽へ行く。板橋に住んでいた頃、赤羽はバス一本だったのでよく飲みにいったが、今では「よし、行くぞ」とちょっとした決意のいる場所になった。それでも年に一、二回行っているのは、それだけ好きな場所…

「まるます家」

今日は、王子の飛鳥山公園へ花見に行く。飛鳥山は、八代将軍吉宗が桜を植えさせたところから始まる、古い花見の名所。当時から上野の山も花見の名所だったが、ここは江戸の鬼門を守る寛永寺の境内だけに、酒と歌舞音曲が禁止されていた。このため、飲めや歌…

立ち飲み「いこい」

次は、東京一安い居酒屋である。まるよしの裏手あたりにある、立ち飲み屋「いこい」。店内は広く、厨房を囲む大きなコの字型カウンターと、その右側に十人くらいが飲める大テーブルがいくつか。客は立ったまま酒を飲み、肴に箸を伸ばす。いかほどかの金をカ…

大衆酒場「まるよし」

「まるます家」は一時間ほどで切り上げ、一番街の裏通りの居酒屋街を散歩してから、駅の方向へ戻り、東口斜め右向かいの「まるよし」へ。「大衆」と「酒場」の間に「まるよし(○の中に吉)」と染め抜かれた大のれんが真新しい。最近になって、作り直したのだろ…

鯉とうなぎの「まるます家」

千住と赤羽は、双子のような町である。いずれも東京23区の東北部に位置し、交通の要所。千住は日光街道の宿場町だが、赤羽の少し先の岩淵には、日光御成街道の宿場があった。将軍家専用の街道だったが、ふだんは一般の通行にも使われ、千住ほどではないもの…