橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「弥生」

classingkenji2008-02-26

OK横丁にあって、いちばん落ち着いた雰囲気の居酒屋が、ここ。中は、コの字型カウンターに一二席ほどがあるだけ。カウンターの前に溝が作ってあり、氷水の中でビール(大瓶五五〇円)が冷えている。銘柄は一通り揃っていて、客は自分で選んで栓を抜く。ビールは氷で冷やすのがいちばん旨い、とはよくいわれること。特に暑い季節、氷水の中から瓶を引っ張り出す清涼感はいいものである。本日のメニューは、しめさば、エビ塩焼き、あなご串揚げ、鱈の昆布じめ、アコウダイ粕焼き、銀むつ照り焼きなど。昔よく来ていた頃は、先代のご主人がいつも店に出ていたが、数年前に来た時は、店の主役を息子に譲って椅子に座っておられた。今日は姿が見えないので、気になって「お父さんは?」と尋ねたところ、「元気ですよ」との答え。ほっとして、ビールをまた一杯飲みほした。(2008.2.15)