橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「いこい」

classingkenji2008-02-27

こうなると、もう一軒行っておきたいのは、立ち飲みの「いこい」である。
もともと立ち飲み屋には、大別して二種類がある。ひとつは、酒販店が店頭で、缶詰や乾き物などの簡単なつまみとともに酒を売り、グラスといっしょに客に渡すもので、「角打ち」と呼ぶこともある。もうひとつは、普通に酒を飲ませ料理を出す居酒屋なのだが、椅子がない、あるいはちょっと具合の悪い人が一時的に休む程度の数しかなく、基本的には立って飲むというスタイルのもの。
ところがこの「いこい」は、酒販店が経営しているので角打ち並みに安く、しかも料理の種類が多いという、ある意味、究極の立ち飲み屋である。広い店内には、中が厨房になっている大きなコの字型のカウンターと、広いテーブルがいくつかあり、朝七時の開店から夜一〇時の閉店まで、人が絶えることがない。値段は、驚くほど安い。ビールの大瓶が三八〇円、生ビールの中ジョッキも三八〇円、ハイボール(焼酎のソーダ割り)に至っては一八〇円、日本酒も一八〇円からある。そして料理が、おそろしく安い。煮込み、肉じゃが、日替わりの煮物、野菜天ぷら、まぐろぶつなど、すべて一一〇円である。生ビールを一杯飲み、煮込みをつついて、久しぶりの赤羽はしご酒の締めくくりとする。(2008.2.15)

いこい
北区赤羽1-3-8
7:00-22:00 第1日休