橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2006-01-01から1年間の記事一覧

長崎「馬次郎」

前回、私が長崎を訪れたのは、一九九五年のこと。長崎で行われた日教組の全国教研に出席するためだった。当然のことながら、集会の後は飲み歩く毎日だったが、偶然見つけて気に入ってしまい、三日続けて通った店があった。それが、銅座にある馬料理の店「馬…

長崎「長崎全日空ホテルグラバーヒル」

一二月三〇日、三一日と二泊したのが、このホテル。名前の通りグラバー亭のある丘の下にあり、横の坂を上ればすぐに大浦天主堂。このホテルには、レストランが二つある。和食と中華の「潤慶」、そしてフレンチの「パヴェ」である。二食付きのパックだったの…

日田工場の黒ラベル

福岡に二泊したあとは、別府と雲仙に泊まった。食事は、別府ではビュッフェ、雲仙では部屋食だったが、とくに書くほどのことはない。飲んだのは、大分の日田工場で作られたと思われるサッポロ黒ラベルである。製造所固有記号は、Hだった。 天然水を売り物に…

福岡「寺田屋」

福岡の二日目、まず昼間は市内および周辺を観光。これまで行ったことのなかった太宰府天満宮にも行ってきた。天満宮は、年の瀬にもかかわらずけっこう人出がある。境内の手前にある太鼓橋の下に猫が一匹。その凛々しい面構えに感心し、ミチザネと命名。昼食…

福岡「ひょうたん寿司」

26日のお昼ごろ、福岡に到着。今回は仕事ではなく、酒と料理、そして温泉を求めての旅である。ホテルに荷物を置き、まず昼食に訪れたのが、天神ソラリア近くの「ひょうたん寿司」である。 昼なのでランチを注文するという手もあったのだが、旅の第一食目。そ…

文藝春秋編『東京いい店うまい店2007−2008年版』

一部では、『日本のミシュラン』とも呼ばれているそうな。創刊四〇年を誇る、今日のグルメガイドの原型を築いた本の、最新版。おそらく一九八〇年代の中頃から、二年に一回改訂されるようになっているが、毎回買ってもたいして役に立たないかと思い、二回に…

怒濤の酒呑み隊『東京 朝から飲める店・昼から飲める店』

タイトルをみて、思わず買ってしまった。今後、力を入れなければならない研究対象である。体が資本とはよく言ったものだ(笑)。 赤羽の「いこい」「まるます家」、銀座の「三州屋」、池袋の「ふくろ」、御徒町の「大統領」などの有名店を押さえ、さらにガード…

「灯串坊」

「灯串坊」と書いて、「とうせんぼう」と読ませる。名前の通り、串焼きがメインの店。入り口の内側に「なぜかよらずには帰れない/だから灯串坊」と張り紙がある。串を「せん」と読ませるのは無理があると思うが、まあいいだろう。そういえば、串という文字…

「セル・ポワブル」

職場の忘年会で、練馬駅の近くのフレンチ、「セル・ポワブル」へ。スープ、または、魚介類や生ハムなど盛りだくさんのサラダ、魚介類のグリル・サフランソース、子羊のグリルまたは牛ヒレステーキ、デザートというコースで、わずか三一五〇円。たいへんリー…

「のだぴん」

今日は二年前のゼミ生の忘年会で、新宿へ。といっても、集まったのは男三人だけ。なんという組織力のなさだ(笑)。一軒目は「美食酒家ちゃんと」というチェーン店で、これは完全にハズレ。料理は、創作料理のつもりらしいがありきたりの味で美味しくないし、…

「大根や」

大学の仕事が少し遅くなり、八時ごろ経堂駅に着く。ほぼ同じ頃に経堂駅に来ていた妻と落ち合ったが、これから食事を作るのは面倒だというわけで、久しぶりに来てみたのがこの店。経堂駅からだと、すずらん通りを二分ほど歩き、左に入ったところにある。店内…

「みますや」

今日は毎日新聞社で特集記事「縦並び社会」を書いた記者たちと座談会ということで、神田「みますや」へ。出版部の編集の司会で、記者たちは取材の感想、私は読んだ感想や格差社会のこれからについて、いろいろ話す。といっても、飲みながらなので話はあっち…

「斎藤酒場」

今日は私の掲示板「居酒屋とり橋」のオフ会で、「斎藤酒場」へ。折からの雨と寒さの中、五時に十条駅に集合。これなら余裕で入れると考えていたのだが、甘かった。店内はほとんど満員。しかし、今日集まったのはわずか三人なので、店の人が一人客に少し移動…

「アマポーラ」

今年の春、職場の若い教員たちから「今度出す本が重版になったら、印税でパーティーを開く」と約束させられていた。それが七刷にもなったわけだから、当然、約束を果たさなければならない。というわけで、私が会場を選んで行ってきたのが、池袋東武メトロポ…

伏見「石勢」

武生から京都に移動し、一泊。翌日はまず大原へ行き、晩秋の三千院と寂光院を楽しむ。寂光院へ行く途中の道は、大原の里のひなびた風景を満喫できる場所。三千院にばかり人が集まるが、この道だけでも寂光院に足を伸ばす価値はある。そのあと伏見へ移動して…

武生「大江戸」「平ちゃん」

越前市男女共同参画センター「あんだんて」から講演を頼まれ、授業が終わったあと新幹線と北陸線の特急を乗り継いで武生へ。越前市は武生市と今立町が合併してできた新しい市である。夜九時ごろ駅に降り立つと、なんと担当の職員の方が出迎えてくれた。ホテ…

「マルキ市場」

韓国訪問ですっかり韓国料理にはまってしまい、今日は近所の「マルキ市場」へ。名前は経堂本店だが、住所は桜上水で、赤堤通沿いにある。このほか下北沢、吉祥寺、三軒茶屋など、全部で一〇店舗あるとのこと。 この店の特徴は入場料というシステム。店に来た…

ソウルで飲む

韓国社会政策学会の国際シンポジウムに出席するため、ソウルへ行ってきた。初めての訪問である。 一一月二二日に羽田を発ち、その日は梨泰院のホテルに泊まる。ここは米国キャンプのある場所で、輸入雑貨の店が多く、通行人にも米国人らしい若者が目立つ。繁…

「谷野旅館」

法事で、実家へ行ってきた。仕事の都合でわずか一泊二日、滞在時間は二四時間にも満たない忙しい旅だったが、こんなことができるようになったのも、能登空港のおかげである。税金の無駄との批判は多く、実際に採算が合っているとは思えない。なにしろ、定期…

川本三郎『旅先でビール』

川本三郎三人説というのがあるそうな。映画評論、文芸評論、都市論と三つの分野で膨大な数の著作をものにしているので、こんなことが一人でできるはずがない、三人いるはずだ、というわけである。しかしこういうエッセイだと、三つの分野が完全にクロスオー…

「名酒センター」

今日は「月刊ビミー」のインタビューで、浜松町の「名酒センター」へ。近くまで行くと、代表取締役の武者英三さん(写真右)が、店の前で待っていて出迎えてくれた。「名酒センター」は、株式会社ヤングマーケティング研究所の経営する日本酒のPRセンターで…

「吾作・ちえ分店」

京王線の下高井戸駅のホームから、いかにも古い大衆居酒屋の雰囲気を漂わせた店が二軒並んでいるのが見える。いつか行きたいと思いつつ、1年ほどが過ぎた。ところが、行こうとするとけっこう難しい。世田谷線のホームを経由すればすぐ前に出るようだが、普通…

お知らせ

今日11月8日、NHK教育テレビ午後10時50分からの10分番組、「視点・論点」に出演します。新著『階級社会──現代日本の格差を問う』の内容から、中心部分を簡単にお話しします。ただし、居酒屋の話はしません(笑)。階級社会 (講談社選書メチエ)作者: 橋本健二出…

「天ん洋」

原稿を持って、赤入れに近所の居酒屋へ。今日は歩いて五分ほどの「天ん洋」である。この店は、経堂に引っ越してくる前に、情報を仕入れて訪れたことがある。魚料理中心のメニューに、日本酒一〇種類ほどと、焼酎三〇種類ほどを揃える。焼酎は、熱心な二代目…

「日本橋紅とん」再訪

NHKの「視点・論点」に出ることになったのだが、話の筋がまとまらないので、資料をカバンにつめ、居酒屋を求めて家を出る。日曜日なので、選択肢は限られる。そこで、気になっていた「紅とん」を再訪することにした。時間の余裕がなかったうえに、日曜日…

「第二力酒蔵」

今日は仕事のあと中野へ。まず四文屋で焼きとんを肴にビールを飲み、喉を潤してから妻と落ち合い、二人で第二力酒造へ。この店はビールがスーパードライなので、一軒目には行かないのである。 店内はかなり広い。向かって左側の入り口から入ると、右側にカウ…

赤坂「ホブゴブリン」「すっとこどっこい」

今日は、7時からサントリーホールで読売日響の定期演奏会を聴く。矢代秋雄の協奏曲2曲を中心とするプログラムで、堤剛と中村紘子が熱演。いいコンサートだった。その後は赤坂へ。 まず入ったのは、以前から行きたいと思っていたブリティッシュパブのホブゴブ…

「金ちゃん」

夕方、練馬区の有識者会議のため練馬区役所へ。八時過ぎに終わり、懸案のもつ焼き屋「金ちゃん」へ。 店はけっこう広く、それぞれ七人ほど座れる向かい合わせのカウンターと、テーブルが七つ。店主はカウンターの内側で串を焼き、煮込みを管理する。そのほか…

「トロ函」

営業活動で、新小岩の都立高校へ。体育館に50ほどのブースが作られ、経済学・心理学・社会学・社会福祉・看護など、領域別に生徒を集めて説明会である。最近、この手の仕事が多い。めったに来ない場所なので、終わった後は当然、居酒屋を物色する。 小岩と名…

居酒屋から見た格差社会

先週、10月5日の毎日新聞に、「居酒屋から見た格差社会」という記事で登場しました。居酒屋考現学、マスコミに初公開です。いまのところ、他から取材依頼も執筆依頼も来ませんねぇ(笑)。記事の本文は、 http://www.mainichi-msn.co.jp/tokusyu/wide/news/200…