橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

大本泉『作家のごちそう帖』

近代日本の作家たちの、食をめぐるエピソードを集めた本なのだが、この種の本にしては酒に関するエピソードが比較的多いから、ここで紹介してもいいだろう。 夫の鉄幹は下戸だったらしいが、与謝野晶子は酒好きで、寝る前にコップ一杯の冷酒を楽しそうに飲む…

浅草「駒形どぜう」

この日は、浅草へ。この店に入ったのは、何年ぶりだろうか。店先で順番を待っている人が十数人いたが、大店だからさほどは待たされない。二階の座敷は、畳敷きのまま、椅子席になっている。テーブルの間隔が十分とってあるので、居心地がいい。 名物のどぜう…

要町「The Cat & Cask Tavern」

要町の住宅街のなかに見つけたタバーン、ラフにいえばイングリッシュ・パブである。英国人の男性と日本人女性の夫婦が営む小さな店で、小さなカウンターに席が四つと、テーブルが二つ。席数を抑えているので、ゆったり感がある。立ち呑みカウンターこそない…

「晩杯屋 大山店」

いま評判の立ち飲み屋の、一年前にできた大山店。赤羽の名店「いこい」で修行した人が始めたとのことで、店内には「いこい」のTシャツが飾られている。壁に貼られた飲み物メニューのデザインは、「いこい」とそっくり。ホッピーセット三七〇円、中二二〇円…

地酒ブームと酒ジャーナリズム

一九七五年ごろから始まった地酒ブームをさらに加速したのは、酒ジャーナリズムともいうべきスタンスを前面に出した、一連の出版物だった。その始まりは、稲垣眞美の『ほんものの日本酒選び』(三一書房・一九七七年)である。 この本は、稲垣の個人的なエピソ…