橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2008-01-01から1年間の記事一覧

森下賢一『居酒屋礼讃』

かつて毎日新聞社から出版された単行本に、大幅加筆して文庫化された。原著は、今日では花盛りの各種居酒屋本の元祖とでもいうべきもので、私も大いに参考にさせていただいている。とくに、客の社会的構成を服装から読み解くという手法は、ここから着想を得…

鹿児島県歴史資料センター 黎明館

鹿児島市内の文教地区にある、歴史系の博物館・黎明館はなかなか充実しているが、とくに目をひかれたのが、このジオラマ。鹿児島最大の繁華街・天文館の昭和初期の姿を再現したものだが、ともかく巨大。いちばん手前の人物の身長は五〇センチほどもあり、奥…

鹿児島・天文館「豊年満作」

天文館付近の飲食店街を歩いていると、「ホッピー」の提灯が目に入ってきた。鹿児島にも、ホッピーは進出していたのである。店の名前は「豊年満作」。提灯を櫓に並べた、祭をイメージしたような外装。中に入ってみると、酒のケースとベニヤ板を組み合わせた…

鹿児島・天文館「黒福多」

二泊の予定で、鹿児島へ。鹿児島といえば、黒豚。豚といえば、もつ焼き、もつ煮込み。天文館周辺を歩き回ったのだが、黒豚のもつ焼きを看板に掲げる店が、なかなか見あたらない。目についたのは、鉄板を使うホルモン焼の店と、一本三八〇円からという高級店…

坂崎重盛『東京煮込み横丁評判記』

著者は墨田区に生まれ、大学で造園学を専攻し、長年にわたって自治体で都市計画に携わった人物。退職後はエッセイストとなり、『TOKYO 老舗・古町・お忍び散歩』『東京本遊覧記』『東京読書』などの著書がある。当代一の、東京街歩きの達人といっていい。こ…

アメ横「大統領・支店」

今日は「居酒屋とり橋」のオフ会で上野へ。「大統領」だが、土曜の夕方となると本店には入れそうにないので、支店を待ち合わせ場所にした。集まったのは、ゆーこさん、ヤミ研さんのお二人。四時半の集合だったが、こちらの店もすでにほぼ満員。奥のテーブル…

下北沢「よっちゃん」

ある人から教えられて、仕事の帰りに寄ってみることにした。下北沢の南口を出て、坂道を五分ほど下ったところ、道の左側に一〇〇円ショップのダイソーがあるが、その反対側の小路を入ったところの右側。ビルの地下に、「大衆酒場 よっちゃん」がある。店内は…

なぎら健壱『絶滅食堂で逢いましょう』

なぎら健壱が、古き時代の雰囲気を色濃く残し、いつ滅びるかわからない(ように思わせる)食堂・喫茶店・酒場を巡り歩くという、雑誌連載の単行本化。赤羽「まるます家」の女性店員たちがずらりと並んだ、表紙の写真が素晴らしい。奥には、なぎら健壱が何とも…

村上春樹『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』

この夏、アイラ島へ行って、何カ所かのディスティラリーを見学してきた。もともとアイレイウイスキーは好きだったのだが、それ以来ますます好きになり、今では食後から寝るまでの間の酒は、たいがいウイスキーである。ロックでなめるように飲む。これまでは…

岡山「立ち呑み ハッピー酒場」

「佐久良家」をからホテルに帰る途中でみつけたのが、この店。これは、東京でも展開しているハッピー酒場ではないか。ホッピーの提灯までぶら下がっている。これは、入らないわけにはいかない。ホッピーを注文すると、「氷入れますか?」と聞かれる。これも…

岡山「佐久良家」

日本福祉大学の仕事で、岡山へ。先方の教員と事務方、お二人と待ち合わせて街に出る。ある人にいわせると、岡山にはいい居酒屋が少ない。瀬戸内の海の幸を美味しく食べさせる店はあるのだが、居酒屋好きが考えるところの「いい居酒屋」は少ないという意味で…

「彩雲瑞」

一年半ほど前、近所にできた中華料理店。実は知る人ぞ知る実力店で、ある週刊誌のミシュランガイド批判記事で、載せるべき店のひとつとして取り上げられたことがある。店主は吉祥寺「竹爐山房」で十四年間修行を積んだとのこと。以前イタリアンだった場所を…

『東京銘酒肴酒場』(三栄書房・2008年・1200円)

居酒屋ムック『古典酒場』の、これまで発行された五冊の総集編ともいうべき居酒屋ガイドブック。ホッピーと酎ハイ、もつ焼きと煮込み系の下町大衆酒場を中心に、多数の店を紹介している。A4版と大きいので、開いて歩き回るには向かないが、飲みながら読む…

忘年会用おすすめ居酒屋リスト

忘年会向けの店を選んでみました。和風居酒屋であること、座敷、個室または広いテーブルがあること、料理の種類が多いことが条件となっています。ご参考まで。 銀座周辺 「樽平」 銀座金春通りから入った小路に残る戦前の一軒家。銘酒樽平・住吉で山形料理中…

40万アクセス達成

昨日、40万アクセスを突破しました。皆さん、ありがとうございます。 最近、アクセス数が増えているのは、忘年会シーズンのためでしょうか? 一度、忘年会向きの店を抜き出してリストにするなんてことも、やってみたいですね。今後とも、よろしくお願いいた…

千歳船橋「なぎ屋」のもつ鍋

この店の看板料理であるもつ鍋は、九八〇円。ところが二人前からだというので、これまで食べ損ねていた。割烹居酒屋じゃあるまいし、もつ料理の店で二人前からとはけしからん、といいたいところだ。しかし、グループ客が一人前を注文したりすると、店ももう…

旬の銀座・再開発が目白押しの今、銀座に、残しておきたい居酒屋を訪ねる

光文社の雑誌「BRIO」の「旬の銀座」というページで、銀座の居酒屋を紹介しました。記事の主要部分は、ネット上でも公開されています。ご笑覧ください。 http://xbrand.yahoo.co.jp/magazine/brio/1831/1.html BRIO (ブリオ) 2009年 01月号 [雑誌]出版社/メ…

「ベルク」

新宿駅の東口改札を出て、少し右側前方にある「ベルク」というビアレストランが、最近話題になっている。狭いフロアにテーブル席と立ち飲み席があり、朝食の時間から夜遅くまで、人が絶えることがない。飲み物、料理とも、びっくりするくらい安い。なにしろ…

思い出横丁「もつ焼 ウッチャン」

最近、新宿思い出横丁に、いろいろ新しい動きがある。まず、旧「やきとり横丁」を含めて、飲食店街全体を「思い出横丁」と称するようになった。東京工芸大学の笠尾敦司さんを中心に、「思い出横丁からアートする」というイベントが行なわれた。そして、それ…

ボージョレー・ヌーボー

新酒の季節である。ボージョレー・ヌーボーは、概して美味いものではない。とくに、某大手酒問屋兼メーカーが「ボージョレーの帝王」などと称して大量販売するヌーボーなど、まずくて飲めたものではない。しかも、高い。フランスだと、せいぜい一本五〇〇円…

「てしごとや」

今日は出版社との打ち合わせで、池袋へ。池袋の西口から、右へ。西口交番の前を通り過ぎたところで、前方に何本かの飲食店街が見えてくるが、その真正面の通りには、「萬屋松風」「酒菜屋」「富士水産」など、日本酒と魚の美味しい居酒屋が何軒か集まってい…

成城「秀」

成城といえば、都内有数の高級住宅地である。その起源は、大正時代。関東大震災の後、都心にあった私立大学・私立学校は郊外へ移転するようになった。牛込区にあった成城小学校の指導者・小原国芳は、当時は砧村喜多見と呼ばれていたこの地に目をつけ、村の…

tanacalm

タナカさんという若い女性がひとりで切り盛りする、落ち着いた雰囲気のバーである。店名は、店主の名前と「静けさ」「落ち着き」という意味の英語をつなぎ合わせたもので、実にこの店にはふさわしい。タナカさんは、穏やかな癒し系のキャラクターで、仕草も…

中野「ブリック」

これは超有名店なので、ご存じの方も多いはず。創業は、一九六四年だから東京オリンピックの年。一世を風靡したトリス・バーの代表格だった。L字型のカウンターといくつかのテーブル。オーセンティックな雰囲気でありながら、安く飲める店である。トリスを…

中野「魚の四文屋」

今日は大学で資料集めをしてから、久しぶりに中野へ。久しぶりに新潟料理の「雪椿」へ行こうと思っていたのだが、見つからない。どうやら、閉店したようだ。周囲がアニメ系の店に取り囲まれているかっこうだから、しかたがないのかもしれないが、さびしいこ…

こゆるぎ次郎「GUINESS アイルランドが産んだ黒いビール」

日本人は、ピルスナー好きである。あの明るく透き通った黄金色のビールで、味は切れがよく軽快。黒ラベル、ヱビス、キリンラガー、一番絞り、モルツなどは、すべてピルスナータイプのビールである。(ちなみに、スーパードライは広い意味ではピルスナーの一種…

千歳船橋「なぎ屋」

千歳船橋は、それほど知られた街ではないし、行ったことがあるという人は少ないだろう。いずれも歩くと20分ほどかかるが、近くには東京農業大学と日本大学商学部があり、若者が多い。だから、若者向けのチェーン居酒屋が何軒かある。 この街に長く住んでいる…

ごまさんま

九州には、魚、それも主に鯖の刺身をゴマと醤油をあわせたタレに漬け込んだ料理があり、博多では「ごまさば」、佐賀や大分では「りゅうきゅう」という。今年は豊漁なのか、刺身で食べられる新鮮な秋刀魚が安く手に入るので、これを秋刀魚で作ってみた。ただ…

銀座「樽平」

今日の二軒目は、ここ。金春通りから細い路地に入ったところにある老舗居酒屋である。四方をビルに囲まれた一軒家。山形の銘醸・樽平酒造の直営店で、銀座六丁目で開店したのは何と一九三一年。現在の場所に移ったのは一九五二年だが、この建物も戦前のもの…

「三州屋 銀座店」

今日は、大阪出張から帰った、その足で銀座へ。午後五時の待ち合わせまで、少し時間がある。こんなときには、「ライオン銀座七丁目店」あたりで時間をつぶすことが多いのだが、今日は居酒屋気分なので「三州屋」へ。ランチの時間から通しで営業しているので…