橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

神田

「樽平」

神田に用事があったので、帰りにこの店に寄ってみた。銀座の樽平は幾度となく行っているが、この店はたぶん初めてだ。 カウンター中心の店で、一人客には実に居心地が良い。ホワイトボードに旬のおすすめがあり、かつお刺し、芋煮、舞茸天ぷら、菊花ひたし、…

神保町「源来酒家」

この日は菱田春草展を見に竹橋へ行き、帰りはこの店へ。昔からときどき来ている中華料理店である。かつては日教組御用達の店で、役員たちと何度か来たことがある。 中華料理といっても、ここの料理は上海の近くの寧波という土地の料理で、薄味の味付け。とく…

「魚串 さくらさく」

この日、神田の二軒目はこの店。老舗居酒屋にも惹かれたが、何となく美味い日本酒気分だったので、メニューをみて入りたくなった。 いい日本酒を揃えている。しかも、安い。飛露喜、作、寫楽、醸し人九平次、春鹿など、みんなグラスで四九九円、一合でも七九…

「三州屋」

この日は、ちょっと用事があって、衆議院会館へ。都心まで来てこのまま帰ることはあるまいと思って、少し考えたあと、神田へ行くことにする。まず立ち寄ったのは、ここ。 都内に三州屋はいくつもあるが、実はこの三州屋は初めて。真ん中にコの字型カウンター…

「ブラッスリー・ル・ザン」

この日は忘年会で神田へ。忘年会そのものは「みますや」で、桜鍋コースをいただく。品数も多く、桜刺と桜鍋は十分なボリュームで、味も上々。四五〇〇円と少々お高いが、この店は酒がリーズナブルなので、全体ではそれほどの値段にならない。 そして二次会が…

ガード下の魔窟

神田は、上野、新橋、新宿などと並んで、最大規模のヤミ市があった場所である。現在の飲食店街の大部分が、その範囲にある。その片鱗は、ガード下にみることができる。神田駅のガードは、山手線、京浜東北線、中央線など線路が多いため、線状ではなく面とし…

「テイルズ・エールハウス」

「せとうち」を出て神田駅の方へ少し歩いたところで、「ピルスナーウルケル樽生」の文字があるのを見つけた。日本で飲めるとは驚きだ。さっそく入ってみることにする。 ウルケルは専用のジョッキで出す。容積は、普通の中ジョッキくらいだろう。いい香りがす…

「せとうち」

取材の打ち合せで、神田へ。JR神田駅からガードの東側を歩き、靖国通りに出る少し前のところの二階にあるのが、この店。岡山から仕入れた瀬戸内の魚が売り物である。 本日の刺身は、平目、肝付の皮剥、鰆、鮹、烏賊など。鮹は部位と切り方を変えた三種類。…

「みますや」

日本酒居酒屋談議、リード役の藤原さん不在で、最初はスローペースだったが、アルコールが回るとともにどんどん話題が出て来る。座談会は9時前に終了。しかしこの面々が、一軒で終わるはずはない。タクシーを拾って、「みますや」へ向かう。 最近は、なかな…

「スタンドバーcuvee」神田店

先日の神田の続きである。もうだいぶ酔っぱらっているのだが、気になる店を見つけて、ちょっとだけ……と店内へ。写真のように、和風大衆酒場風の字体で「立ち飲み処」とあるが、その上とメインの看板にはカクテルグラスをあしらったマークに「cuvee」の文字。…

「とら八」

編集者と別れ、一人で神田を徘徊。神田はあまり来ることがないので、新鮮な感じがする。だいぶ飲み食いしたあとだから、店と真剣勝負したくなるような名店風のところは避け、焼きとんを看板に掲げたこのチェーン店へ。店はかなり広い。入ってすぐのL字型カ…

「大越」

今日は、執筆のための顔合わせで、雑誌の編集者と会う。まず、「みますや」へ向かったのだが、六時前というのにすでに予約で満員。この店も、なかなか入れない店になってしまった。予約しないと入れないというのは、下町居酒屋の正しい姿ではないと思うのだ…

神保町「やきとり屋」

今日は、政策分析ネットワークという団体が主催する「政策メッセ」の、「格差と地域格差」というセッションに出席するため、駿河台の明治大学へ。パネリストは私の他、新潟大学の田村秀さん、中央大学(四月一日付で東京学芸大学から異動)の山田昌弘さん、朝…

「大越」

同じく神田のガード下、「升亀」の隣にあるのが、この「大越」。勝とも劣らぬ、素晴らしい大衆酒場である。ここも、広い。六人掛けから一二人掛けのテーブルが一五卓ばかりあり、一〇〇人以上は入れそうだ。「升亀」が典型的な大衆酒場とするなら、「大越」…

「升亀」

JRの神田駅周辺は、あまり行かない場所だ。新橋と並んでサラリーマンの集まる場所であり、居酒屋が多いことは分かっているのだが、ついでの用事というものがないので、なかなか足を運ぶことがない。新橋から神田にかけての山手線のガードは、戦前の赤煉瓦の…

神保町「やきとり道場 こだわりやま」

今日は、社会理論学会の大会で講演を頼まれ、駿河台の明治大学へ。あまり知られていない学会だが、参加者には古い新左翼系(形容矛盾だが)の研究者や活動家が多いようで、平均年齢は極めて高い。会の後の懇親会場は御茶ノ水駅そばの中華料理店で、居酒屋好き…

毎日新聞社横の屋台

千住の次は、竹橋の毎日新聞社へ。毎日新聞社の入っているパレスサイドビルの横の吹きさらしに、酒と簡単な肴を出す屋台がある。ここで最後の締めというわけである。もちろん、記者たちのたまり場である。一般人が足を踏み入れる場所ではない。記者に連れら…

神保町「やきとり屋」

神保町の三省堂書店の二本裏側あたりにある焼鳥屋。名前の通りの焼鳥屋で、焼きとんはない。ここの名物は、生樽ホッピー。写真でご覧の通り見事にクリーミーな泡は、名ビアホールのビールに通ずるものがある。味は、申し分ない。TOKIO古典酒場の編集長が「蜂…

「みますや」

二軒目に向かったのは、やはり「みますや」。 今日は金曜日の夜だけに、仕事を終えたサラリーマンの比率が高い。連れられてきた同僚女性たちを含めれば、会社帰りの人々でほぼ占拠されている趣である。この店で、神田の古い居酒屋の情緒を味わいたいというな…

須田町「けむり」

今日は、出版社との打ち合わせで小川町へ。行ったのは、燻製料理の店「けむり」である。須田町一丁目のこの一角は、奇跡的に空襲の被害を免れた場所で、あんこう鍋の「いせ源」、鳥鍋の「ぼたん」、甘味処の「竹むら」などがある。「いせ源」の隣にあるこの…

「みますや」

今日は毎日新聞社で特集記事「縦並び社会」を書いた記者たちと座談会ということで、神田「みますや」へ。出版部の編集の司会で、記者たちは取材の感想、私は読んだ感想や格差社会のこれからについて、いろいろ話す。といっても、飲みながらなので話はあっち…