橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

加賀・能登

金沢「酒屋 彌三郎」

ザルツブルク音楽祭から帰ったのもつかの間、能登杜氏組合の夏期研修会で講演を頼まれていたので、石川県へ。途中立ち寄った金沢で、入った店がここ。古民家を利用した和食の店である。 コースを頼んでいたので、料理のメニューは見ていないのだが、日本酒は…

能登ワイン

この週末は、法事で能登へ。向かう途中で立ち寄ったのが、このワイナリー。かつては外部への委託生産で、甘い土産物ワインばかり造っていたワイナリーだが、いまでは周囲にある三〇ヘクタール近くの畑でベリーA、ヤマソーヴィニョン、シャルドネ、メルロー…

金沢「だんまや水産 金沢駅前店」

年末は、金沢へ。この日は会食の予定だったのだが、少し時間が余ったので、この店に入ってみる。養老乃瀧系列のチェーン店だが、興味を持った理由は、このメニュー。字が小さくてわかりにくいかもしれないが、抜粋すると、こんな内容である。 だんまや海鮮刺…

金沢「タブリエ」

金沢での最後の夜は、家族みんなで外食。まずは、木倉町の「ぼんぼり」で日本酒をいろいろ飲んだあと、同じく木倉町に最近できたらしいイタリアンに入ってみることにする。木倉町のかなり奥の方、灯が暗くなったあたりにぽっと現われる佇まいが、なかなかよ…

「酒前線きたなか」

金沢の竪町商店街を歩いていると、良さそうな酒屋がある。入ってみると、これは素晴らしい品揃えの店。ワインや焼酎も充実しているが、なんといっても石川産地酒の品揃えがいい。菊姫、天狗舞などの有名どころ、日栄、萬歳楽、福正宗などの地方大手はもちろ…

金沢「黒百合」

金沢の最後は、必ず立ち寄ることにしているこの店。駅ビルの中にあり、店を出て三分もあれば列車に乗ることが出来る。昔は地下街の狭くて薄暗い店で、地元の常連客ばかりだったが、今では広く明るく、観光客も気軽に立ち寄れる店になった。この店は小堀酒造…

金沢「よし久」

二日目の晩は、居酒屋というより郷土料理店のこの店。金沢駅にほど近く、創業が一九五四年という老舗だが、現在はビルになっている。玄関脇には、メニューやランチコースの写真などがいろいろ貼られていて、観光客でも入りやすそうだ。 大きな店だけに、たい…

金沢「ぼんぼり」

せっかくの金沢だからもう一軒、というわけで木倉町へ。少し店を物色し、見つけて入ったのが、この店。比較的新しい店のようで、地元の若者客が多い。くつろいで飲んでいたので、記録はとっていないが、メニューは幅広く、郷土料理や魚介類もひととおり揃っ…

金沢「高崎」

仕事で、金沢へ。金沢の店はかなり知っているつもりだが、それでも酒を飲むようになってから定住したわけではないので、老舗で行ったことのない店がいくつかある。この店もその一つで、今日が初めて。入ると右手にカウンター一〇席、左にテーブル席、奥に個…

金沢「菊一」

金沢では「高砂」「赤玉」とならぶ、おでんの老舗。香林坊の交差点近く、109のそばにあり、場所はわかりやすい。L字型カウンターとテーブル二つほどの小さな店で、親父さんと女性が二人で切り盛りしている。おでんは、一〇〇円から六〇〇円まで。例外は…

「なんで、や」金沢木倉町店

昨日行った「鏑木」の斜め向かいに、ティーケーエス・グループの「なんで、や」があった。金沢に店を出したことは知っていたが、木倉町の入り口という好ポジションである。金沢に、モツ焼を食べながらホッピーを飲むことのできる店が出現というわけである。…

金沢「鏑木」

今日は、義父母の金婚のお祝いで、ヤミ市時代の名残をとどめる飲食店街・木倉町にあるこの店で夕食会。洋風が基本だが、和や中華の要素も取り入れるレストランである。本日の献立は、オードブル四点盛りに始まって、サラダ、スープ、蟹クリームコロッケ、伊…

金沢「黒百合」

能登を後にして、三泊の予定で金沢へ。金沢へ行ったときは、短時間でも必ず一度は立ち寄ることにしているのが、この店。金沢駅ビル内にあり、店を出て一分で改札をくぐることができる。旅人たちがよく訪れるが、市民の常連客も多い。店の中央に大きなコの字…

珠洲市「龍泉」

寿司屋や料理旅館の類は別とすれば、奥能登には本格的な料理店は少ない。そもそも人口が少ないし、うまい魚介類は魚屋から買ってきていくらでも食べることができるから、なかなか商売として成り立たないのだろう。そんな環境にあって、素晴らしい日本料理を…

能登町「日本海倶楽部」

内浦湾に面した眺望のいい場所にある、奥能登唯一の地ビールのブルワリー&レストラン。ビールは、ピルスナー、ヴァイツェン、ダークラガーの三種類で、いずれもグラスが四六〇円、ジョッキが七五〇円。ピルスナーは香りがよく、ややボディがあって、じっく…

金沢「いたる」

金沢の中心部・香林坊の交差点から一本犀川寄りの、飲食店や用品店などの灯りが続く路地を兼六園方向に少し行くと、用水のほとりに出て、近くには老舗の寿司屋やおでん屋、ホテル、書店などが並んでいる。さらに少し進んだ道の左手にあるのが、この店。ニュ…

金沢・新天地「なかじ屋」

ヤミ市横丁の新天地にある焼きとん専門店である。金沢で焼きとんにお目にかかることは少ない。東京のヤミ市横丁に焼きとん屋が多いのは、豚の内臓は統制除外品で自由に売ることができたからだが、同じ理屈からいえば金沢のヤミ市に焼きとんの店があったとし…

金沢のヤミ市

戦災を免れた古都・金沢でも、終戦直後にはヤミ市が簇生した。当時を知る人の話と、金沢市立図書館で調べた結果を総合すると、ヤミ市があったのは、つぎの4ヶ所である。(1)金沢駅前。再開発で、現在はホテル日航金沢になっている。ただし、駅前周辺を総合的…

白山市「高砂茶寮」

町村合併のせいで、聞き慣れない名前の自治体が増えた。白山市もその一つで、金沢近郊で海に面した松任市から霊峰白山の麓の白峰村までが合併した、広大かつ奇妙な形をした自治体である。こちらは子どものころに地名を覚えていて、しかも普段は使わないとき…

金沢ホッピー事情

金沢にホッピーはあるのか? ごらんの通り、金沢大学近くのジャスコの酒売り場には、55ホッピーを含めてホッピーが三種類並んでいた。東京に55ホッピーを置く店は少ないから、むしろ進んでいるともいえる。一一八円という値段も、ごく普通の水準だ。金沢駅の…

金沢「黒百合」

これは金沢の駅ビルにあり、長年にわたって市民や金沢をよく訪れる旅人たちに愛されてきた名店である。駅ビルが建て替えられる前は地下街にある小さな店だったが、地上に移転してずいぶん広くなった。しかし、一人客を大切にするカウンター中心の店の雰囲気…

波並「フラットベーカリー」

年末、実家の能登と妻の実家のある金沢へ資料収集をかねて帰省してきた。まず空路で能登に入り、一泊した後で金沢へ。その途中、昼食に立ち寄ったのが、ここFlatt's Bakeryである。奥能登の内側に位置する能登町には、 矢波・波並・ 藤波と「波」のつく3つの…

キリンビール北陸工場

辰口温泉の帰り道に立ち寄ったのが、ここ。工場に「キリンビアパーク北陸」が併設されていて、工場見学の後は試飲をすることができる。キリンラガー、一番絞り、淡麗生など、主力商品を製造する工場である。規模は、さほど大きくない。貯蔵タンクが十数本立…

金沢「四十萬谷本舗」

この店は、金沢の漬け物の老舗。金沢市街の南側、寺院が密集する寺町の裏手に工場と本店を構える。麹味噌と酒粕を合わせた中に野菜を漬け込んだ「金城漬」がメインだが、冬季限定のかぶら寿しも美味。その他にも一夜漬けや魚介類の粕漬けなど、いろいろな製…

辰口温泉「まつさき」

この日は義父の喜寿祝いで、辰口温泉へ。金沢から車で三〇分ほどのこの温泉は、規模が小さく、全国的にはさほど知られていないが、地元の人々にはけっこう親しまれているようだ。この「まつさき」は泉鏡花が執筆の場所にしばしば使っていたという老舗で、広…

金沢「マル源酒店」

子どもの頃から飲んでいた、というわけではない(当たり前だ)。しかし、たいていの料理には酒が入っているわけだから、その味に親しんでいたとは言えるだろう。だから私は、石川県の酒が好きである。石川の酒の特徴は、日本海側には珍しく濃醇タイプであるこ…

金沢「まいもん寿司」

金沢にはロードサイド型の大型回転寿司がいくつかあるが、この「まいもん寿司」金沢駅西本店は、その中でも一番人気の店。ちなみに「まいもん」とは「おいしいもの」という意味である。ネタによってかなり細かい価格設定がされている。安い方では、たまご、…

珠洲「とんき」

五日間、郷里へ帰省してきた。墓参りや親戚まわり、妻の父親の喜寿祝いなどを終え、最後の夜は金沢で居酒屋めぐりをするはずだったのだが、そこへマンションの管理会社から電話。なんと、わが家が空き巣に入られたとのこと。泣く泣く、急きょ飛行機で帰って…

「谷野旅館」

法事で、実家へ行ってきた。仕事の都合でわずか一泊二日、滞在時間は二四時間にも満たない忙しい旅だったが、こんなことができるようになったのも、能登空港のおかげである。税金の無駄との批判は多く、実際に採算が合っているとは思えない。なにしろ、定期…