橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

金沢「黒百合」

classingkenji2009-01-06

能登を後にして、三泊の予定で金沢へ。金沢へ行ったときは、短時間でも必ず一度は立ち寄ることにしているのが、この店。金沢駅ビル内にあり、店を出て一分で改札をくぐることができる。旅人たちがよく訪れるが、市民の常連客も多い。店の中央に大きなコの字型カウンターがあり、手前に小上がり、奥にテーブル席が四つほどあるが、スペースをぜいたくに使っていて、広々とした感じがいい。
メニューには香箱蟹、寒ブリ、甘海老、鰆、かぶら寿司、大根寿司など、金沢の冬の味覚がずらりと並び、治部煮など加賀料理の定番も揃う。さらに、おでん、ぬた、もろきゅう、冷ややっこんなど、居酒屋の定番も一通りある。料理の多くは、居酒屋として普通、あるいはやや高めの値段だが、酒は安い。金沢の銘酒、小堀酒造の「萬歳楽」を普通酒から大吟醸まで揃えていて、値段も一合三一〇円から一五〇〇円まで。昼はランチがあり、夜まで休み無しで営業している。もちろんメニューは季節によって変わり、四季折々に北陸の味を楽しむことができる。どんなに忙しい出張でも、列車で帰る予定ならこの店に立ち寄り、帰りのわずかな時間を使って金沢の味を楽しむことができるはずである。(2008.12.22)

石川県金沢市広岡町ロ-1 金沢百番街内あじわい館
9:30〜22:00 無休