橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

日本各地

高知「ひろめ市場」

早稲田大学校友会の支部総会で講演を頼まれ、高知市へ。土地柄を考えて「格差社会と居酒屋」というテーマでお話ししたところ、大いに受けた。 翌日は、ここで飲むつもりだった。生鮮食料品店、土産物店の他、飲食店が四〇店ほどひしめいている。広場の席に陣…

草津「アル・ロドデンドロ」

三月の終わりになって、やっと暇になった。というわけで、二泊三日の日程で草津温泉へ。実は、草津温泉は初めて。湯畑のみえる部屋を取って、一日目はゆっくりくつろぐ。そして二日目のランチは、このイタリアンへ。綿貫ペンションという「日本初のペンショ…

神戸「地酒バル 飲山」

この日は、学会で神戸へ。三宮駅近くのホテルを取り、近所で飲もうと出かける。日本酒が飲みたかったのだが、店頭のメニューや看板をみるかぎり、十四代、獺祭、飛露喜など、東京でいくらでも飲める超有名酒を前面に出した店ばかりだ。兵庫の酒を飲ませる店…

大宮「いづみや本店・第二支店」

この日は、ヤミ市研究会で大宮へ。以前、思い出横丁でご一緒した埼玉大学の面々との交流会である。 大宮市内を歩くのは初めてなので、まずは大宮公園駅で降り、歴史民俗博物館、大宮公園、氷川神社と回り、参道を通って駅前へ。待ち合わせまで少し時間があっ…

神戸「四文屋 三宮二号店」

この日は日本社会学会大会で神戸大学へ。階級・階層関係の部会を中心に、久しぶりに真面目に報告を聞いた。終わったあとは、神戸に住む知人若手と三宮へ。店を物色していて、見つけたのはこの店。一軒目に入るのもどうかと思うので、最初は魚と日本酒のおい…

仙台「○△□まるさんかくしかく」

この日は、学会の大会で仙台へ。会場の東北福祉大学で懇親会のあと、大挙して国分町方面へ繰り出す。人数が多いだけに店を探すのに手間取ったが、何とか入れたのが稲荷小路のこの店。大店だが、この店は当たりだった。 「親方からの本日の収獲」と銘打った日…

野毛「すきずき」

今日は大阪転勤が決まったMさんの送別会で、横浜・野毛へ。少し早めに行って、桜木町から都橋あたりまで散策してから、この店へ。評判の店らしく、まあまあ大きい室内だが、どんどんグループ客が入ってきてすぐに満員になる。魚主体のコース料理は、いずれ…

神戸・三宮高架下

講義を済ませたあとは、神戸大学院生の村上さんに案内してもらって、神戸のヤミ市跡を見て歩く。まずはJR神戸駅附近の高架にへばりついた店舗群の前を通って新開地へ。湊川公園まで行ったあと元町へ向かい、高架下を三宮まで。さすが専門家の案内で、主要…

会津東山温泉「新滝」

大河ドラマが評判ということもあり、一泊二日で会津へ。福島県は何度か行っているが、いずれも仕事で郡山と福島市へ行っただけ。会津は今回が初めてでだ。 泊まった宿が、ここ。夕食は「遊仙」という館内のレストランでいただく。「創作会津伝統郷土料理」と…

札幌「サッポロビール園・開拓使館」

学会最終日は、ビール園へ。 ちょうど紅葉真っ盛りで、開拓使館はご覧の通り宝石箱のような美しさだ。まずはビール博物館でテイスティングをし、そのあとはいつものようにガーデングリルで食事。ここでしか飲めないアルトビールが、やはり素晴らしい美味しさ…

札幌「七番蔵」

何か美味い日本酒が飲みたいと思いつつ、「魚平」からホテルに向かう途中で見つけた店。経営は、夕張郡栗山町の小林酒造。元来は札幌で創業した蔵だが、早い時期に移転。蔵元には六つの蔵があるが、札幌にできた七番目の蔵というのが、店のコンセプトらしい。…

札幌「魚平」の八角

この日は、学会の大会で札幌へ。大会の後は、懇親会など無視して狸小路へ。以前も来て気に入っていたこの店である。この店の特徴は、なんといってもサッポロクラシック生を含む飲み放題六〇分八八〇円。中ジョッキは四三〇円なので、二杯飲むとほぼ同額で、…

福岡「海幸」

福岡へ一泊出張。東京で仕事を済ませてからの前泊は、ホテル着が一〇時過ぎ。ホテル近くで少し食べて飲んだだけだった。 翌日は、一時頃に仕事を終える。帰りの飛行機までは、四時間ほどだ。天神のあたりを歩き回ってみたが、昼からやっているめぼしい店は見…

富山「酒肆 真酒亭」

富山居酒屋の旅、最後はこの店である。「満寿泉」の蔵元も、古くからつきあいのある店として名前を挙げておられた。富山市を代表する日本酒の店である。いちばんの自慢の酒は、桝田酒造店が富山錦という珍しい品種の米を使って醸した「みゃあらくもん」。純…

富山「米清あら川」

次に入ったのは、富山駅に近い「米清あら川」。本店は魚料理が売り物の老舗割烹だが、こちらは同じ素材を使ってシンプルな料理を出し、酒の種類を増やした居酒屋バージョンといった店である。 バイ貝の刺身は、肝を溶いてネギと醤油で味を調えたタレでいただ…

富山「桝田酒造店」

「満寿泉」で知られる酒蔵を訪問することにした。富山市街の北、神通川の河口に近い岩瀬という街にある。かつて北前船の交易で栄えた廻船問屋街である。その名が全国に知られるようになったのは、四代目社長の桝田敬次郎さんの代からで、三盃幸一杜氏ととも…

富山「石坂善商店 酒家蔵部」

店名は、「いしざかぜんしょうてん さけくらぶ」と読む。一一五年続くという酒屋が営む日本酒バーで、店を切り盛りするのは、四代目社長夫人と五代目の娘婿。地元の蔵を支援するため、瓶を並べて売るだけではなく、客に飲んでいってほしいと考えて、店頭で酒…

富山「桜亭」

こちらも、魚が自慢の居酒屋。主人の早川潤也さんは新湊漁港の準組合員。魚屋任せの仕入れは決してせず、競りの現場に立ち、目をつけた魚を仕入れてくる。日替わりメニューを見ると、その日の魚が、つり漁、かご漁、定置あみ漁、さしあみ漁などと、漁の仕方…

富山「親爺」

取材で富山へ行ってきた。何回かに分けて、そのレポートを。 まず訪れたのは、富山駅に近い場所にある「親爺」。魚が自慢の老舗居酒屋である。今年で創業から六〇年になるとのこと。日替わりメニューを見てまず目を見張るのは、刺身の種類が多いこと。がんど…

ぶどうの丘展望レストランの鳥もつ煮

泊まったのは、勝沼の「ぶどうの丘」。食事はもちろん、展望レストラン。甲府盆地を一望するこのレストランは、夜景もすばらしい。 鳥もつ煮ブームはここまで来たかという感じだが、フレンチ中心のこのレストランまで出すようになった。とはいっても、内蔵料…

甲府「奥藤本店 国母店」

話は、昨年末に戻る。年末の仕事も終え、「あー、疲れた。温泉に入って美味い酒が飲みたい」というわけで、一泊二日で山梨へ行くことにした。まず向かったのは甲府周辺で、少し観光をした後、この店へ。B1グランプリですっかり有名になった、鳥もつ煮発祥の…

松江「松江堀川地ビール館」

松江出張の最後は、地ビールを飲みに行く。松江城の近く、小泉八雲旧居から歩いて五分ほどと、便利な場所だ。地ビールを作っているのは島根ビール株式会社で、ブランド名を「松江地ビール ビアへるん」という。工場と同じ建物に別経営のレストランがあり、こ…

松江「朔屋」

松江には、地元の酒、それも純米原酒や大吟醸など珍しいものをいろいろ飲ませる店が何軒かある。七月に紹介した「佐香や」もそのひとつだが、もう一軒。こちらの店は、島根のすべての銘柄を揃えていて、店先に「酒は純米 燗ならなお良し」と上原浩の言葉が掲…

松江「diningなごみ」

店構えといい店名といい、洋風のダイニングなのに、店頭にあるメニューは和風というのに興味をもって入ってみたのが、この店。 刺身の種類が多い。しかも、ハタハタ、クエ、ヨコワ、ノドグロなど、珍しいものが多い。しかも安く、高級魚のノドグロ、クエも九…

松江「川京」

仕事で、松江へ。七月にも来たから、今年二回目だ。この日訪れたのは、この店。 内海隆一郎の作品に「鰻のたたき」という短編がある。松江へ単身赴任していた男が、東京に帰ってから病死するのだが、死の直前、「松江に、松江に」とうわごとをいって涙を流し…

金沢「黒百合」

金沢の最後は、必ず立ち寄ることにしているこの店。駅ビルの中にあり、店を出て三分もあれば列車に乗ることが出来る。昔は地下街の狭くて薄暗い店で、地元の常連客ばかりだったが、今では広く明るく、観光客も気軽に立ち寄れる店になった。この店は小堀酒造…

金沢「よし久」

二日目の晩は、居酒屋というより郷土料理店のこの店。金沢駅にほど近く、創業が一九五四年という老舗だが、現在はビルになっている。玄関脇には、メニューやランチコースの写真などがいろいろ貼られていて、観光客でも入りやすそうだ。 大きな店だけに、たい…

金沢「ぼんぼり」

せっかくの金沢だからもう一軒、というわけで木倉町へ。少し店を物色し、見つけて入ったのが、この店。比較的新しい店のようで、地元の若者客が多い。くつろいで飲んでいたので、記録はとっていないが、メニューは幅広く、郷土料理や魚介類もひととおり揃っ…

金沢「高崎」

仕事で、金沢へ。金沢の店はかなり知っているつもりだが、それでも酒を飲むようになってから定住したわけではないので、老舗で行ったことのない店がいくつかある。この店もその一つで、今日が初めて。入ると右手にカウンター一〇席、左にテーブル席、奥に個…

札幌「サッポロビール園 ガーデングリル」

仕事で、札幌へ。翌日も予定があったので、札幌日帰りという強行軍である。とはいえ、飲まずに帰るわけにはいかない。一時間半ほど時間があったので、サッポロビール園へ向かう。不景気で、しかも震災で外食産業は冷え込んでいるはずだが、ビール園は驚くほ…