橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

富山「桝田酒造店」

classingkenji2012-06-11

「満寿泉」で知られる酒蔵を訪問することにした。富山市街の北、神通川の河口に近い岩瀬という街にある。かつて北前船の交易で栄えた廻船問屋街である。その名が全国に知られるようになったのは、四代目社長の桝田敬次郎さんの代からで、三盃幸一杜氏とともに良質でコストパフォーマンスの高い大吟醸酒を世に送り続けてきた。
そして現社長、五代目の隆一郎さんは実に精力的である。世界中を飛び回って、日本酒の良さをアピールするとともに、造りの上では、さらにランクの高い大吟醸、一〇年以上熟成させた「古酒限定大吟」、麹の比率を極限まで上げた「全麹」、モンラッシェの樽で熟成させた「SUPECIAL」など、意欲的な試みで全国の日本酒ファンを瞠目させてきた。
吟醸酒が眠る蔵の奥には、正面に満寿泉の大吟醸、左右に世界の名醸ワイン。「満寿泉が世界のワインを従えている図です」と、隆一郎さんはさらりといってのける。越中と加賀の中間に位置するこの蔵は、両者の美質を兼ね備えた、文字通りの名酒を造り続けている。(2012.5.11)

富山県富山市東岩瀬町269番地
http://www.masuizumi.co.jp/