橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

富山「酒肆 真酒亭」

classingkenji2012-06-16

富山居酒屋の旅、最後はこの店である。「満寿泉」の蔵元も、古くからつきあいのある店として名前を挙げておられた。富山市を代表する日本酒の店である。いちばんの自慢の酒は、桝田酒造店が富山錦という珍しい品種の米を使って醸した「みゃあらくもん」。純米大吟醸相当の酒だが、非売品で、会員に配布されるほかは、この店でしか飲めない。すっきりと触りなく、旨みと、香りともに、「満寿泉」の美質を頂点まで高めた感がある。
村田さんは、驚くほど酒に詳しい。そして、自分の信念を実践しておられる。たとえば、酒の保冷庫の温度は一四度。冷蔵庫のようには冷やさず、季節を問わず温度を一定に保つ。村田さんによると、これは仕込みのときの井戸水と同じで、日本酒の基本の温度だとのこと。県内のそれぞれの酒蔵について、最近の蔵の様子、蔵元のがんばっている姿など、実に詳しく把握されているのにも驚かされる。「真酒亭日本酒塾」や蔵元訪問など、さまざまなイベントも企画して、富山の日本酒界を盛り立てようと日々がんばっておられる様子には、頭が下がる。思わず「みゃあらくもん」の会員になってしまった。(2012.5.12)

富山市桜町2-6-20 福沢ビル2階
17:00〜22:00 月休