橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

大阪「発酵のすすめ」

classingkenji2013-10-14

天満の夜、二軒目はここ。そのものずばりの変わった店名だが、酒店直営とのこと。
メニューを見て驚いた。日本酒が数十種類、値段の順に並んでいるのだが、最安値は九〇ミリリットルのグラスで三三〇円。これが十数種類あるのだが、その冒頭に「久保田百寿」と「越乃寒梅」が並んでいる。店によっては一〇〇〇円も取るこの超有名酒を最安値にするとは、酒屋にしかできない芸当だろう。もっとも正規ルートでの仕入れ値比例とすれば、こうなるのは当然なのだ。ちなみに最高値は、久保田万寿の九〇〇円で、これも安い。良心的価格の見本のようなもので、ある意味、究極の日本酒酒場といっていい。
お通しは日替わりのようだが、この日はゆでた枝豆を塩麹にさっと漬け込んだものが出た。これがなかなか美味い。気が利いた肴がいろいろある。ていねいに練って青葱と人参をあしらったなめろうは、味つけ加減が絶妙で、日本酒の味を引き立てた。大阪に行ったら、また寄ってみたい店だ。(2013.9.7)

大阪市北区天神橋4-12-11
17:00〜24:00 無休