橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「大志満」

classingkenji2008-09-22

今日は、妻がヨーロッパ滞在で不在の間にお世話になった人を招いての接待で、銀座へ。私もお供でご相伴にあずかろうというわけである。向かったのは、加賀料理の「大志満」。この店は、新宿、高輪、横浜などにもあるチェーン店で、水準の高い加賀料理を食べさせてくれる。前身は加賀温泉の旅館らしいが、金沢に本店があるというわけではなく、あくまでも東京地区の店である。
本日の献立は、先付の子持ち鮎の煮浸しから始まって、白和えやかますの棒寿司などが盛られた前菜、鱧と舞茸の土瓶蒸し、お造り、治部煮椀(写真)、甘鯛の丹波焼、大野芋の二身揚げ、和牛の網焼、そして鮭といくらの釜飯、デザートとつづいた。酒は当然日本酒で、加賀の萬歳楽と菊姫、そして能登の竹葉をいただいた。菊姫吟醸酒はメニューにない品で、ラベルに「吟醸」と大書された限定品。注文する前に試飲させてくれたのは、うれしいサービスである。
加賀料理といっても、この店は郷土料理というより加賀懐石の店で、治部煮が必ず付くところと、季節によって丸ごとの蟹やぶり大根などが出てくるところを除けば、京風懐石とほとんど区別がつかない。銀座のまん中にありながら、価格も良心的。今日は接待だけに、ちょっと高いコースを個室でいただいたが、幕の内は二一〇〇円から、コース料理も三一五〇円からある。それだけにシビアなコスト計算をしているようで、吸い物の具や切り身の大きさなど、行った日によって変わるようだ。ある意味では、手を抜かない店ということだろう。銀座五丁目のコアビルの九階にある。かなり混むので、予約した方がいい。(2008.9.15)

大志満 銀座店
中央区銀座5-8-20 ギンザコアビル9F
03-3574-8080