橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

金沢・新天地「なかじ屋」

classingkenji2008-01-10

ヤミ市横丁の新天地にある焼きとん専門店である。金沢で焼きとんにお目にかかることは少ない。東京のヤミ市横丁に焼きとん屋が多いのは、豚の内臓は統制除外品で自由に売ることができたからだが、同じ理屈からいえば金沢のヤミ市に焼きとんの店があったとしてもおかしくはない。だからネット検索で新天地に焼きとん専門店があるのを見つけたときは、もしかするとヤミ市直系の店ではないかと期待したのだが、聞いてみると開店は最近とのこと。店主は若く、以前勤めていた酒場で串焼きを焼いていたことがあり、金沢にない隙間をねらって焼きとん専門店にしたのだという。シロ、カシラ、タン、ハツ、ガツ、レバ、ハラミが一〇〇円、トントロとトンバラが一五〇円と、焼きとん不毛の地・金沢にしてはがんばった値段といえるだろう。ワンカップの地酒を一〇種類ほど置く。新天地の一番奥の方で、写真のようにガラス張りで中がよく見えるから、このあたりの店にしては初めてでも入りやすい。ビールはアサヒで、当然ながらホッピーなどはない。(2007.12.27)