橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

能登町「日本海倶楽部」

classingkenji2009-01-03

内浦湾に面した眺望のいい場所にある、奥能登唯一の地ビールのブルワリー&レストラン。ビールは、ピルスナーヴァイツェン、ダークラガーの三種類で、いずれもグラスが四六〇円、ジョッキが七五〇円。ピルスナーは香りがよく、ややボディがあって、じっくり飲むに値する佳品だった。料理は、地元の魚介類や地鶏を使った料理が中心で、「日本海倶楽部風海鮮丼」という名前で「能登丼」のキャンペーンに参加するパエリアも出す。併設されたファームで飼育されたエミューやワラビーの料理もある。
仏子園という社会福祉法人が経営していて、知的障害者がビールの醸造やレストランのアシスタントとして働いている。地ビール醸造は、作業そのものはさほど難しくなく、しかも作る喜びがある仕事だから、授産施設には向いているかもしれない。一時期、レストランを併設した地ビールのブルワリーが全国にできたが、経営の厳しいところが多く、撤退も相次いだ。日本ではビール=ピルスナーという観念が強く、かといってピルスナーばかり作っていては大企業に太刀打ちできないという、厳しい経営環境が、その主な理由だろう。しかも奥能登は観光地といっても、冬は閑散としているから、普通の企業ではなかなか採算が合わないだろう。地ビールと福祉を結びつけたビジネスモデルとして、他の地域にも参考になるのではないか。(2008.12.21)

石川県鳳珠郡能登町字立壁92番地
11:00〜22:00 水休(祝祭日は営業)
http://www.nihonkai-club.com/index.html