橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

白山市「高砂茶寮」

classingkenji2008-01-07

町村合併のせいで、聞き慣れない名前の自治体が増えた。白山市もその一つで、金沢近郊で海に面した松任市から霊峰白山の麓の白峰村までが合併した、広大かつ奇妙な形をした自治体である。こちらは子どものころに地名を覚えていて、しかも普段は使わないときているから、違和感がぬぐいがたい。さて、その旧松任市に「高砂」という名の日本酒を造る金谷酒造があるが、ここに隣接してつくられたフランス風懐石料理の店が、この「高砂茶寮」である。コースは一種類のみで、一〇品二九四〇円とリーズナブル。酒は、高砂本醸造(一合四七五円)から大吟醸金賞受賞酒(六〇ミリリットル一〇五〇円)まで一三種類が揃い、他に日本酒を使ったカクテルなど。この日のメニューは、スモークサーモンと大根のサラダから始まって、パンプキンのムース・フォアグラ添え、湯葉と白ごまのポタージュ、スズキのポワレ、クリスマス風に盛りつけられたローストビーフと焼き野菜など。料理の質は、値段の割には美味しいという程度だが、いろいろ食べて日本酒との相性を試してみることが出来るのは楽しい。しかも蔵を改造してつくった店内は、なかなか居心地が良い。何種類か飲んだ酒の中では、三〇〇ミリリットル一二六〇円とリーズナブルな大吟醸生酒と、洋梨の香りがする生のにごり酒(一〇〇ミリリットル四二〇円)がよかった。客は、少人数の女性のグルーブや、職場の忘年会らしい性別年齢ばらばらのグループなど。ランチも同じメニューなので、ランチをここで食べて夜は金沢市中心部の居酒屋というのも悪くない。予約は必須。JR松任駅から徒歩一五分というが、タクシーを使った方が無難である。(2007.12.26)