橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「せとうち」

classingkenji2011-01-24

取材の打ち合せで、神田へ。JR神田駅からガードの東側を歩き、靖国通りに出る少し前のところの二階にあるのが、この店。岡山から仕入れた瀬戸内の魚が売り物である。
本日の刺身は、平目、肝付の皮剥、鰆、鮹、烏賊など。鮹は部位と切り方を変えた三種類。岡山名物のままかり(四八〇円)は、東京で食べるとたいがい、土産物屋で売っているのと同じく、小ぶりのものを酢でしっかり締めたのが出てくることが多いが、こちらでは一〇センチ前後の大きめのものを色よく焼き上げてタレをかけた、本場と同じスタイルで出てくる。ゲタの唐揚げとは聞くとちょっと驚くが、シタビラメのこと。佐賀ではクツゾコといい、英語ではソールフィッシュというから、発想は同じである。デベラガレイは香ばしく、しかも二八〇円と安い。
生ビールと中瓶が四八〇円。日本酒は岡山の喜平で、本醸造四八〇円、特別純米五八〇円、純米吟醸六八〇円。片口に入れて出てくるから、何人かで分けて飲むことができる。焼酎も数種類あり、四八〇円。良心的な値段で、瀬戸内の上質の魚料理がいただける店だから、覚えておいて思い立った時にまた行ってみようと思う。(2011.1.11)

千代田区神田須田町2-12
17:30〜24:00(日〜22:00) 土祝休