橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「かしら屋」

classingkenji2009-09-07

今日は出版社の編集者と飲む予定だったが、大学での雑用が思ったより早く終わり、1時間半ばかり空き時間ができてしまったので、赤羽で時間をつぶすことにする。ちょうど、衆議院選挙も大詰め。東京十二区が大変なことになっているらしいので、見物も兼ねてというわけである。五時頃駅に着いてみると、ちょうど西口で幸福実現党が演説をしていた。民主党が、演説会の準備をしているのは見かけたが、結局、燃える選挙区の雰囲気は味わえずじまい。
いつもの「まるます家」は満員で入れない。そこで、前から気になっていたこの店に入ってみることにする。「川越若松屋直営店」とあるが、川越の「若松屋」はもともと、東松山の「若松屋」から分かれた店のはずだから、ようするに東松山風やきとりの店ということだろう。
串焼きはカシラ、タン、ハツ、レバー、ナンコツの五種類で、一本百三十円。本店と同じく、カシラは注文しなくても一本ずつ出してくる。カシラは、やはり東松山風にネギと肉を交互に刺したもので、基本は肉、ネギ、アブラ、ネギ、肉という五ピース構成のようだ。カウンターに味噌を入れた壺があり、刷毛で塗っていただく。味は、まあまあといったところ。東松山本店に比べると、肉の切りそろえ方がやや乱雑で、焼きにムラがあるようだ。ビールはサッポロで、大ジョッキ七八〇円、中ジョッキ五〇〇円、大瓶五五〇円。東松山の「若松屋」は、ビール大瓶七〇〇円という法外な値段だったが、こちらは普通の値段である。サワー類、ホッピーは三六〇円。
それにしても、この店には少々不満がある。やきとりというのは、焼きたてをすぐに食べるのがいちばん美味しい食べ方だろう。とくに、臭みの出やすいもつ焼きはそうだ。ところがこの店では、一本食べ終わるとすぐに次の串が運ばれてくる。せわしないことこの上ない。これではゆっくり飲めはしない。というわけで、時間のない人向け。ゆっくり一人で飲む場所とはいえない。赤羽OK横町に、「まるます家」の側から入ってすぐの左側にある。(2009.8.27)

北区赤羽1-17-6
17:00〜23:00 日祝休