橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

松戸「松戸酒場」

classingkenji2010-07-14

ふと思い立って、松戸へ行ってみた。表向きの目的は、松戸市立博物館と常磐団地の見学。常磐平団地は、一九五九年に入居が始まった巨大団地で、総戸数は五三〇〇。多くの団地で建て替えが進む中、自治会が一致団結して建て替えを拒否し、高齢化に取り組むまちづくりを進めている。最近塗り替えられたと思われる住棟は十分美しく、成熟した緑に囲まれた素晴らしい環境。こんな団地なら、住んでもいいなと思わせる。松戸市立博物館は、完成当時の団地の建物の一角と住戸を復元していて、当時の雰囲気が濃厚に立ち上る。
さて、見学の後は居酒屋だ。松戸には「開進」という大衆酒場の名店があるらしいのだが、残念ながら土曜日は休業。まず入ったのは、店名からして入らないわけに行かないだろうというこの店。大衆酒場と紺地に白く染め抜かれた暖簾が心をひく。L字型カウンター八席と、四人掛けテーブル二卓の店を、おかみさんが一人で切り盛りしている。ビールは中瓶と生が五〇〇円。酎ハイは三八〇円、ホッピーは四二〇円。冷奴が二八〇円、茗荷つきだと二〇円高というので、茗荷つきのを注文したら、スライスがどっさり載せられてきて、お得感があった。もつ焼きは一一〇円だが、鮮度が今ひとつで、しかも焼きすぎで硬い。あくまでも地元の常連客が集まる店である。
私が入った入り口と正反対のドアを開けて、男性客が入ってきた。店の裏が細い路地になっているらしい。後で入ってみると、新宿・風林会館横の路地のような、風情のある通りだった。(2010.7.3)

千葉県松戸市本町15 - 27