橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「やるき茶屋 池袋西口店」

classingkenji2010-07-13

ワールドカップでの日本の健闘は、意外だった。この日は、日本が3−1でデンマークに勝った日。どこで飲もうかと考えながら歩いていたら、こんな看板を見つけた。「お祝いして 最初のドリンク1杯31円」。「大ジョッキはかんべんしてください」とあるのが笑えるが、入ってみることにする。
このチェーン店に入ったのは、何年ぶりだろう。記憶では、客が来ると太鼓を鳴らすことと、注文すると店員が「喜んで!」と大声で唱和すること以外、とくに特徴がなかったように思うのだが、今回はちょっと違った。日替わりメニューが充実していて、とくに魚介類は、マトウ鯛刺、金目鯛の刺身と煮付け、サザエの刺身と壺焼き、カナガシラの煮付けなど、チェーンではあまりお目にかからないものが並んでいる。いくつか注文してみたが、味はいちおう合格点。この店は直営店のはずだが、店の裁量で仕入れし、メニューを決めているのだろう。日本酒が十種類ほどあり、好きなものを三つ選んで利き酒セットにすることもできる。佐渡の「北雪・純米大吟醸」があるのはうれしい。
池袋は若者の多い町だが、この店は若者があまり多くない。どちらかといえば地元臭が強く、商店街のご隠居さん風、中高年夫婦が目につく。十一時から開いているとのこと。池袋昼酒の選択肢のひとつに加えたい。(2010.6.25)

豊島区西池袋1-15-7 吉大ビルB1
11:00〜02:00(金土祝前日〜4:00) 無休