橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「手前みそ 池袋店」

classingkenji2010-01-06

二軒目は、編集者がまだ行ったことがないというので「ふくろ」へ。一階のカウンター席はあいにく満員で、二階へ。この店の二階は初めてだ。一階が満員でも、二階はけっこう空いているということを知る。そして三軒目。目当ての店に入れず、適当に入ってみたのが、この店。
あとで知ったのだが、レストラン「KIHACHI」などを展開するアイビー(株)の大衆酒場業態だった。本店は銀座で、そういえば松屋通りを築地方向へ入ったところに、大きな店があった。メニューはというと、焼きとん一本一三〇−一五〇円、焼鳥一八〇円、もつ味噌煮込み四五〇円、ナンコツ唐揚げ四八〇円など、典型的な大衆酒場メニューと、温玉のせ白味噌シーザーサラダ五八〇円、味噌漬クリームチーズ四〇〇円などの無国籍料理が並列する。酒は、ホッピー四〇〇円(中二一〇円)、酎ハイ類三〇〇−四三〇円、カクテル類四五〇円、生ビール四五〇円、地酒が数種類あって一合六八〇円、焼酎四三〇−六〇〇円など。変わったところでは、名古屋赤味噌ラガー七〇〇円、岡崎八丁味噌ラガー七五〇円などというのもある。
こういう大衆酒場を模倣したチェーン展開が、デフレ下居酒屋の一つのトレンドだが、メニューに洋風や無国籍を取り入れたところは、「テング酒場」とも共通している。焼きとん、もつ煮込みとホッピーさえあるなら、こういうチェーン展開は大歓迎である。ちなみに焼きとんの味は、少々高いだけあって、「テング酒場」より上。都心繁華街の一等地なら、材料をけちって安くするより、一三〇円くらい取って美味しいものを出してもらった方がいい。(2009.12.15)

豊島区西池袋1-34-3 矢島ビル2F
平日 16:00〜23:30 日・祝 15:00〜22:30 無休