橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

金町「大渕」

classingkenji2009-11-04

今日は、ふと思い立って金町へ。先日読んだ『みひらん 東京下町沿線編』に影響されて、小岩と並んで東京二三区最東端のこの町を訪れてみたくなったのである。大学から池袋へ出て、山手線で西日暮里まで行き、千代田線に乗り換える。六駅目が金町だから、そう遠くはない。駅から少し歩いた場所の踏切を渡ると、細い道の両側に店が並ぶ、ちょっと淋しい雰囲気の居酒屋街が現れる。その少し奥の方に、この店がある。
幅の狭いカウンターに六席、四人掛けテーブルが二卓で、奥には狭い座敷がある。この店を、親子三人で切り盛りする。
モツ焼は、三本三〇〇円、五本だと四五〇円。レバ刺しなどモツの刺身類は三五〇円。コブクロ皿も三五〇円だが、「本生」四〇〇円とあるのは、湯通ししない生ということか。秋刀魚やいかの刺身もある。ハイボールが三〇〇円で、ビールは五五〇円。ハイボールは正統派のエキス入りで、ガス圧も加減がいい。モツ焼は、少し辛めのたれがよくからんでいる。シロはシャキシャキしていながらすっと噛み切れるレバ刺しは新鮮で噛み応えがあるおいしさ。
客は中高年の男性と、中年夫婦など。東京の端の下町の、まったりした空気が流れる。ふだんと違った空気にひたることができて、癒やされる。(2009.10.20)

葛飾区金町5-26-4 水休