橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

日本酒フェア2014

classingkenji2014-07-08

今年も池袋のサンシャイン60で開催された日本酒フェア。午後の部に参加してきた。まずは、全国新酒鑑評会受賞酒の公開利き酒会から。開会直後に行ったのだが、会場は長蛇の列で、だいぶ待たされた。会場が狭いのかと思ったら、そんなことはない。広い会場は日本酒好きで一杯で、若い人が多いのにも驚く。入賞酒約四二〇点は地域別にまとめられ、長いテーブルに同じラインナップの二列に並べられている。各地域のテーブルへの入り口には係がいて、試飲の進み具合を見ながら、新しい客を入れる仕組みだ。
入賞酒のほとんどは、山田錦・アル添大吟醸酵母もおそらく、似たり寄ったりだろう。だから味は非常に似ていて、よく出来た酒ほど見分けがつきにくい。ときおり、これはと思う酒に出会うのだが、出品酒リストを見ると、純米だったり、山田錦以外の米だったりする。この鑑評会、雑味のないクリアな酒を造る技術を競わせるというのが元々の趣旨だったのかもしれないが、だとしたらその使命は、すでに終わったのではないか。ワインの世界にたとえれば、最高の甲州種ワインを理想だと決めて、あらゆるワイナリーの技術をこの基準で判定しようとするようなもの。存在意義がわからない。実際、私の大好きな銘柄の酒もいくつかあったが、受賞酒はいずれもアル添大吟醸で、その酒蔵の本来の魅力をそぎ落としてスリムにしたような酒ばかりだった。
一通り目立ったところを試飲したあとは、全国日本酒フェアの方へ。だいぶ飲んでいたので、さっと回るだけにしておいたが、今年も大盛況。今年は間違いなく、日本酒反転攻勢の年である。(2014.6.21)