橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2014-01-01から1年間の記事一覧

大山「やきとんひなた」

池袋に引っ越してから、この店へ行く回数が増えた。店長とは別に、社長の辻さんが奥に控えて店を下支えしている。もつ焼きはもちろん、刺身もイタリアンもうまい。ビールはサッポロ赤星。シャリキンホッピーもうまいし、日本酒も良いものを置く。この日の日…

読売新聞「昭和時代」

本日の読売新聞に掲載された現代史企画「昭和時代」は、敗戦直後のヤミ市を中心とした世相を描いたもの。左下隅に、私がコメントを寄せています。記者がまとめた文章で、多少手を入れたとはいえ意を尽くさない部分がありますが、ご笑覧を。なぜか、カストリ…

高田馬場「とん八」

今日は、研究会で早稲田キャンパスへ。八時くらいに終わり、高田馬場まで戻って居酒屋を物色する。見つけてすぐにいい店だと直感して入ったのが、ここ。以前行った「青柳」の隣である。 縄のれん、古びた木の内装、カウンターに下げられた黒塗りの木の値札。…

新興チェーン居酒屋の系譜

チェーン居酒屋の先駆者である「天狗」と「養老乃瀧」は、ある時期まで居酒屋界の両横綱とも評されたが、一九九〇年前後から新興のチェーン居酒屋が台頭し、やがて追いつかれ、追い越されていく。その起点は、七三年に一人の男が札幌で開店した小さな居酒屋…

八起

赤羽で「まるます家」の次に好きな店が三軒ほどあるが、ここはそのひとつ。東京の数ある横丁のなかでも、もっとも成熟した雰囲気のOK横丁のなかほどにある名店だ。 店は大きい。一階は長大な対向カウンターとテーブル席。二階にもテーブルや小上がりがある…

「まるます家」

久しぶりにやって来た。まだ明るいうちから、行列ができている。周囲の商店街も、活気がある。居酒屋が、ますます増えている。一軒の居酒屋が商店街に人を呼び込み、商店街を活性化させたという、奇跡のような現実。行列だと行っても、客の回転は比較的速い…

両国 大相撲観戦後の居酒屋事情

この日は久しぶりの全面休日。まずは上野公園へ行き、そこから散歩しながら浅草へ。ちょうど三社祭の最終日で、浅草は大賑わい。地元の人も、日本人観光客も、外国人も、みんな祭りを楽しんでいる。しかし、どう見ても地元の人がいちばん楽しそうだ。若者も…

明治神宮の酒樽

研究会で参宮橋のオリンピック記念青少年センターへ行くことになった。ただ行くだけではつまらないので、カメラを持って新宿から歩くことにした。代々木の先から明治神宮に入る。ここは人工林だが、すでに原生林のような風格。手を入れないだけに、実に多様…

「呑禅 二号店」

どこで飲もうかと池袋を歩いていて、この店が目に入った。 同じビルの2階から上は「清瀧」で、一階と地下のこの店は、「清瀧」の廉価バージョンということらしい。 確かに、安い。エビスビールの中生が三八〇円(黒ラベルは三六〇円)、サワー類・焼酎・サワー…

ハイボール

ハイボールが人気である。どこのスーパーでも、炭酸水を売るようになった。これから、ハイボールの季節だ。夏はビール、というのは正しいが、本当に乾いたときは、ビールですら喉にしつこく感じることがあって、そんなときはハイボールか酎ハイがいい。 最近…

稚鮎

この季節になると毎年作るのが、稚鮎を使った酒肴である。 まずは、素焼きに山葵をあしらい、上から醤油を掛け回したもの。もちろん養殖物だが、弱火で少し時間をかけて焼けば、すっきりした味に仕上がる。濃醇な酒がいい。これとは別に作ったのは、山椒煮。…

本郷「白糸」

この日は研究会で本郷へ。内容は一九六〇年代の団地調査で、団地といっても経営主体(公団、公社、自治体)と地理的位置によってずいぶん多様だということを、改めて確認。研究発表をひと通り聞き、軽くコメントして終わり。そのあとの打ち上げは、ここ。 私の…

新板橋「ニュー加賀屋 板橋店」

本日の二軒目は、この店。板橋はなじみのある場所だが、なぜかこの店には入ったことがなかった。 カウンターとテーブル、小上がりという構成。店はやや小さめだが、加賀屋の定番メニューのほかに、刺身が一〇種類近くあり、天ぷら類もいろいろ。今日は飲まな…

新板橋「君想ふ暮らし」

名店「やきとんひなた」が、都営三田線の新板橋駅近くに、イタリアンの店を出した。「ひなた」のラインナップは、これで完成したように思う。もつ焼き屋だがイタリアンと刺身も出す店、魚料理店だがイタリアンも出す店、そしてイタリアンだが刺身も出す店、…

石神井川の桜

今年も、ここに来た。毎年、桜を見に来ることにしている石神井川である。護岸工事で深く掘り下げられた水面に、両側から桜の枝が長く伸び、まるで渓谷の桜のような景観。個人的には、東京でも指折りの桜の名所である。住宅地の中を流れる川で、周囲には家が…

飛鳥山

今年の花見は、王子駅近くの飛鳥山へ。ここは徳川吉宗が作った公園で、江戸時代から庶民の花見の場所として親しまれたところ。渋沢栄一邸があった場所でもあり、現在も渋沢資料館と渋沢庭園がある。名前の通り起伏が多く、混んでくると傾斜地にシートを敷い…

「ミツル」

仕事場マンションの近くに、立ち飲み屋がある。前から気付いてはいたのだが、店名と真新しい垂れ幕の感じから、なんとなく若者が一人でやっている落ち着かない店のようなイメージがあって、なかなか足を運ぶ気にならなかった。通りかかった時にちらりと中を…

みかわや

自宅のマンションの向かいに「みかわや」という酒屋があるが、ここが夜になると赤提灯を点して居酒屋を始める。看板に「ちょい飲み やすちゃん」とあって、居酒屋としての店名は「やすちゃん」らしい。ちゃんとカウンターとテーブルがあり、煮込み、おでん、…

二日で3万アクセス

二月のアクセス数がなぜか多かったので、記録を調べてみた。驚いたことに、二月二六日と二七日の二日間だけで、三万アクセスが集中している。多くの人が、「魚へんに愛」というキーワードでたどり着いている。Googleで調べてみたことろ、とある番組で「魚へ…

「幸や」

池袋の外れ、雑司が谷霊園の近くにあるのが、この店。近い駅は、有楽町線の東池袋か、都電荒川線の東池袋4丁目だが、グリーン大通りをずっと行ったところの高速のガード下だから、池袋駅からでも行きにくくはない。 入るとサラリーマンのグループと少人数の…

チェーン居酒屋の先駆者「天狗」

チェーン居酒屋が花盛りである。覚えきれないくらい多数のブランドを展開する大手チェーンがある一方、わずか一〇店前後を展開するだけの中小チェーンも多い。都心の居酒屋街など、チェーン店でない店を見つけるほうが難しい。 バブル崩壊以降、居酒屋の店舗…

王子「山田屋」

都内をいろいろ回ったあと、何となく足を運んだのが、この店。店に入ると、フロアを取り仕切っている店長(?)が座る前に「生でいい?」という。いいよというと、すぐに持って来たのはキリンの中生(三九〇円)。名物の半熟卵は、小鉢に蕎麦を添えて供されるも…

要町「鳥平」

ご近所居酒屋、第三弾はこの店。「鳥平」とはよくある名前だが、こちらの店は名前の通り鶏だけで、豚モツなどはない。十数種類ある焼鳥は、二本三〇〇円が基本。一人前五本の盛り合わせ(七五〇円)があったので注文。塩かタレかと聞かれたので、おまかせにし…

東京マラソンと神谷バー

昨日は、東京マラソン。まあまあの天気だったので、電車を乗り継いで、銀座、浅草、有明と観戦してきた。テレビなどで見ていたとおり、いろんな仮装で走るランナーがいて、見ていても実に楽しい。今日の新聞に出ていたが、走りながら結婚式ということで、途…

要町「へい和」

ご近所居酒屋訪問、今日はこの店。要町の交差点北側の山手通りから、ほんの少し左に入ったマンションの一階にある。ほぼ正方形の店内には、テーブルが四組と、カウンター六席。ゆとりのある配置で、居心地がいい。メニューは厨房の前に掲げられた木札とボー…

要町「かなめ」

池袋に引っ越したといっても、実はいちばん近い駅は要町。ふだんは池袋駅を使うことが多いので、あまり足を運ばないのだが、ご近所さんだから居酒屋にもひととおりご挨拶しておかなければ。というわけで、まず行ってみたのがここ。池袋には、JYONNOBIという…

ラフロイグ・オン・ザ・スノー

二月八日は、大雪だった。当日は入学試験があり、早稲田の駅から試験会場まで雪道を延々と歩く羽目になった。幸いにも降り始めだったから、電車の遅れはさほどでもなく、試験は平穏に終わる。ただし、帰り道にたいへんな思いをした受験生は多かっただろう。 …

人世横丁・跡地

二〇〇八年に消滅した人世横丁。跡地はしばらく駐車場になっていて、なんともいえない無常感を漂わせていたが、二〇一一年の暮れになって、ニッセイ池袋ビルが建った。ご覧の通りの二一階建て。どうせなら、人世横丁の店を、地割りそのままで地下に収容する…

「dancyu」日本酒特集

と思ったら、dancyu最新号も、日本酒特集だった。白地に「日本酒。」とのみ書かれた潔い表紙だ。冒頭には山同敦子さんによる概説記事。以前のように甘辛、淡麗濃醇と簡単に分類できなくなった日本酒を、「モダン」「トラディショナル」「ローカル」「フォー…

雑誌の日本酒特集

雑誌で、日本酒特集が相次いでいる。少し前だと、昨年一二月の『PEN』。「星付き50銘柄が決定しました!」というのがキャッチフレーズで、かなり売れたらしい。 最新の二冊が、「モテる日本酒。」がテーマの『HANAKO FOR MEN』と、「心尽くしの『日本酒』…