橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

石神井川の桜

classingkenji2014-04-06

今年も、ここに来た。毎年、桜を見に来ることにしている石神井川である。護岸工事で深く掘り下げられた水面に、両側から桜の枝が長く伸び、まるで渓谷の桜のような景観。個人的には、東京でも指折りの桜の名所である。住宅地の中を流れる川で、周囲には家が密集しているから、シートをひろげて宴会をするような場所がないのは残念だが、散歩するのは実に気持ちが良い。いちばんの見所は、中板橋駅の少し上流あたりから、下流に向かって中山道を越え、旧中山道あたりまでの約二キロ。写真はそのゴール地点、板橋の地名のもとになったとされる橋、板橋附近である。
ここから旧中山道の商店街を都心に向かって少し歩いたところに、実に品揃えのいい酒屋がある。ネットショップなどでプレミア価格で売られることもある、めったに手に入らない名酒が普通に定価で売られている。この日は、「花陽浴・無濾過純米吟醸瓶囲い・山田錦」を買った。家に帰るとさっそく封を開ける。肴は、もう出回りはじめた稚鮎を素焼きにし、山葵をあしらって醤油を掛け回したもの。美味である。(2014.4.5)