橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

王子「山田屋」

classingkenji2014-03-04

都内をいろいろ回ったあと、何となく足を運んだのが、この店。店に入ると、フロアを取り仕切っている店長(?)が座る前に「生でいい?」という。いいよというと、すぐに持って来たのはキリンの中生(三九〇円)。名物の半熟卵は、小鉢に蕎麦を添えて供されるもので、たぶん二三〇円。ハムカツを注文すると、二枚を揚げて半分に切り、四切れ並べたものが出てきた。ボリュームにたじろぐが、一六〇円。ただし、ハムは紙のように薄い。
日本酒が、白鷹、八海山、久保田、鶴齢など数種類あって、いずれも安い。焼酎も良いものを数種類揃えている。まわりの中高年客はいずれも、ちゃんと銘柄を選んで注文している。比べたくなるのは十条の齋藤酒場だが、酒はやや高めで質が良く、料理は安めでわずかに質が落ちるといったところか。
一〇年ぶりで来たという客が、女将さん(?)に話しかけている。
「変わらないねぇ」
「あたりまえだよ。変えるくらいならやめるよ」
この店、伝票というものがなく、店員も誰がどれを注文したかちゃんと覚えていないので、料理があがってきてから「○○の方〜」と呼ばれる。会計は皿とグラスで数えるので、その点では問題ないが、他の人に回ってしまい、いつまでたっても料理にありつけない可能性もあることに注意。

北区王子1-19-6
PM16:00〜PM21:00 ランチあり 日祝休