橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

要町「へい和」

classingkenji2014-02-20

ご近所居酒屋訪問、今日はこの店。要町の交差点北側の山手通りから、ほんの少し左に入ったマンションの一階にある。ほぼ正方形の店内には、テーブルが四組と、カウンター六席。ゆとりのある配置で、居心地がいい。メニューは厨房の前に掲げられた木札とボードだけで、他の壁に貼り紙やポスターの類はまったくない。潔いインテリアである。
瓶ビールがキリン、サッポロ、アサヒと揃っているのがうれしい。今日の付け出しは、ブロッコリーの蟹あんかけ。なかなか気が利いている。肉豆腐(六五〇円)を注文すると、温め直すだけかと思ったら、その場で調理を始めた。タマネギは歯ごたえが残り、豆腐は少しだけ味のしみた状態で、豆腐そのものの味が楽しめる。出汁もよく、量もあって、値段の分の価値は充分にある。カンパチの刺身(七五〇円)は、見るからに新鮮で角が立って美しい。味も、申し分なかった。日本酒は、おそらく名の知れたメーカーのものと思うが、料理を邪魔しない堅実なもの。
ビール一本、日本酒二本と料理で三一〇〇円だった。酒の値段が分らないが、おそらくビール六〇〇円、日本酒四〇〇円、付け出し三〇〇円だろう。料理の値段だけを見るとちょっと高めの店かと思ったが、きわめてリーズナブルである。初老の板前二人と女将さんの三人で切り盛りする。近所にいい店を見つけた。ときどき寄らせてもらうことにしよう。(2014.2.12)

豊島区要町1丁目13-12