大塚「幸司忠」
庚申塚から都電荒川線で大塚へ。大塚には、「串駒」「江戸一」「きたやま」という三大名店がある。もともと有数の三業地で、池袋以上の繁華街だった歴史があるとはいえ、今ではかなり地味な存在であるこの町に、都内でも屈指の名店が三つもあるというのも、おもしろい。とはいえ、こうした名店はちょっと気構えていく場所であって、いい加減酔いが回った後の三軒目に行く場所ではない。そこで向かったのが、この店。店名は「こうじちゅう」と読む。実は、巣鴨「おふく」の姉妹店とのこと。
付け出しに出てきたのが、出回りはじめた菜の花の芥子和えと、ちくわにキュウリを詰めたもの。気が利いている。しっかり味のしみこんだ鰺の南蛮漬けも、おいしい。何よりよかったのは、馬の串焼き。これはタテガミと赤身を交互に刺したもので、たてがみは柔らかくとろけ、これを赤身といっしょに口に入れると、絶妙なハーモニーだ。日本酒は、銀盤、越の景虎、久保田、八海山、刈穂など(六五〇−八〇〇円)、焼酎も二〇種類ほど(五〇〇−七〇〇円)揃っている。瓶ビールはサッポロとアサヒがあって、中瓶五〇〇円、生は五五〇円。オジサン向け大衆酒場という外観とはうらはらに、女性中心の接客は印象が柔らかい。三大名店とは別の性質の店だが、地元の人、仕事の行き帰りに近くを通る人は、通う価値があると思う。(2009.1.23)
東京都豊島区北大塚2丁目28-7 17:00〜2:00 水休