橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

土田美登世『やきとりと日本人』

やきとりは、私の居酒屋考現学にとっても重要な研究対象であり、拙著『居酒屋ほろ酔い考現学』でも一章をあてて論じている。ところが今度は、やきとりとやきとり屋の歴史から、調理法、素材、そしてやきとり屋の現況まで論じてみせた一冊が現われた。とくに、現代の名店のうち高級店についてはほとんど知らなかったし、ご当地やきとりの数々とその成り立ちについて、焼き鳥の調理法などについて書かれた部分など、たいへん面白い。名店といわれる「バードランド」に熱電対まで持ち込んで、調理の温度を測定するところなど、ここまでやるかと驚かされる。
扱われているのは、主に鶏肉を焼いた焼き鳥で、豚の内臓を焼いたもつ焼きは脇役の扱い。こちらについてのもう一冊が、書かれて然るべきだろう。誰か、書きませんか。

やきとりと日本人 屋台から星付きまで (光文社新書)

やきとりと日本人 屋台から星付きまで (光文社新書)