橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「萬屋・おかげさん」

classingkenji2008-10-07

今日は、拙著『居酒屋ほろ酔い考現学』出版の打ち上げで、四谷へ。待ち合わせたのは、毎日新聞社出版局の編集者二人と、記者一人。指定されたこの店は、全国から有名無名取り混ぜて、選りすぐりの日本酒を揃えることで、静かな注目を集めている店らしい。六時開店だが、席は半分以上が予約で埋まり、すぐに満員になった。まずはビールを飲んだあと、「鳳凰美田」「早瀬浦」「奥播磨」などを燗でいただく。燗酒を頼むと、ステンレスのちろりを熱湯の入った酒燗器に入れて出してくれる。ちろりには温度計が添えられており、しばらくおいて好みの温度で飲んでくださいとのこと。一〇月に入ったばかり。熟成した純米酒を、ぬる燗にして飲むのにいい季節である。
酒肴も、なかなかのもの。秋刀魚の刺身肝あえは、肝を醤油や味噌のようなもので溶き、刺身を和えたもので、日本酒には最高の相性。その場でわらを使って炙って出す鰹は、戻り鰹の味の濃さとフレッシュな薫香がマッチしてすばらしい。するめいかしょっつる焼は、控えめなしょっつるの味がイカの甘味を引き立てる。
四谷駅から四谷口に出て、道の右側を新宿方向へ歩いて五分ほどの、ビルの地下。客は、サラリーマン、いかにも日本酒好きそうな中高年の一人客、そして酒好きOLのグループなど。便利な場所ではないが、たまには日本酒を楽しむために遠出してみても悪くないと思わせる。ホームページもある。(2008.10.3)

新宿区四谷2-10 松本館B1
18:00〜22:30 月日祝休
http://www.okagesan.net/