橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

スタグフレーション・その2

classingkenji2008-10-20

スタグフレーションとは、物価上昇と不況が共存する現象をいう。経済学の常識では、好況時には物価が上昇し、不況時には物価が下落するものだから、これは単純にいえば理論から外れた現象ということになる。景気の指標としては、失業率が使われることが多い。2008年8月の失業率は4.2%で、前月比0.2%の上昇。高いといえば高いという程度だが、非正規雇用が増えているうえに、求職活動そのものを止めてしまう人もいるから、雇用状態は数字以上に深刻だ。女性の失業率が上がっていないは、この理由からだろう。
さて、本題。居酒屋の値上がりが続いている。行く回数のいちばん多い居酒屋である「灯串坊」も、ついに値上げ。モツ焼きが90円から110円と20円の値上がりである。値上がり率は22.2%とかなり高い。しかし、これまでよく90円で出してきたなという上質のモツ焼きなので、不満は少ない。適正価格という感覚を失わせる値上げは、客を離れさせるが、そうではない値上げというものもあるのである。(2008.10.12)

[付記]昨日の文章では、一部韓国のデータが混入していました。訂正しました。

灯串坊(とうせんぼう)
世田谷区経堂2-8-8
17:00〜1:00 水休