橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

有楽町「登運とん」

classingkenji2017-09-09

思い立って、久しぶりに入ってみた。有楽町から日比谷へ抜けるガード下の名店だ。一九五三年創業という老舗で、もつ焼きともつ煮込みがメイン。このあたりのガードは昌平橋に次いで古い一九一〇年に完成したもので、曲率半径の大きいゆったりしたアーチが実に美しい。もつ焼きの煙がもうもうと立ちこめ、電車の音と客の笑い声がこだまするこの空間は、関東大震災と空襲を耐え抜いたのだ。
残念なことが、ひとつ。この店の売りの生ホッピーを頼んだところ、中ジョッキに氷をたくさん入れてもってきた。これでは、生ホッピーの良さの大半が失われてしまう。氷が半分ほど入っているから、量は半分ということにもなる。他の客が「生ホッピー、氷なしで」と注文したのでみていると、小さなタンブラーでもってきた。都心のこの場所で、大衆的な値段を保っていて、しかも昼から営業だから楽ではないと思う。しかし、多少高くなっても生ホッピーは生ホッピーらしく飲みたい。(2017.9.1)

千代田区有楽町2-1-10
11:30〜23:00 無休