橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

一之江「カネス」

classingkenji2017-10-16

この日は、行ったことのない場所へ行ってみようと、都営新宿線の一之江へ。
幹線道路沿いにはマンション、小道に入るとアパートまたは一戸建の住宅が続く、何の変哲もない郊外の街である。こういう場所がたくさんあるから、東京は人口が多いのだ。少し散歩したあと、下町好きにはけっこう知られているこの店へ。私は、初めての訪問だ。
店に入ると、大きなコの字型カウンターがあり、その内側には大きな煮込み鍋が鎮座している。まずは、ビールと煮込みをいただく。他の客は、三人。みんなテレビの大相撲に見入っている。皆さん、相撲に詳しいらしく、登場した力士が昔はどうだったなどという話をし、おかみさんもときおり口をはさむ。まったりした雰囲気が、心地よい。ハイボールも、美味しい。
一之江の駅から北へ歩いて一〇分ほど。一之江駅ができたのは一九八六年のことで、この駅がなかったら、北の新小岩、南の葛西と、それぞれ三キロ以上という場所である。だから、だんだん増えていく客は、みんななじみの客ばかり。中華そばもやっているらしく、二本の暖簾が下がるたたずまいが、なかなかよい。(2017.9.19)

江戸川区一之江6-19-6
16:30〜22:00(日祝14:00〜) 水・第3木休