橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

堀切菖蒲園「小島屋」

classingkenji2008-04-28

京成線の堀切菖蒲園駅から歩いて2分ほど。「元祖ハイボール」を名乗る老舗の居酒屋である。創業は終戦直後で、凹型カウンターの現在の店になってからも、すでに40年が経つとのこと。ハイボールの元祖については諸説があるが、もっとも古い店の一つであることは確かだろう。グラスに冷えた炭酸を注いでから、水差しからエキス入りの焼酎を注ぎ入れる女将さんの手つきは、一種の様式美を感じさせる。炭酸は興水舎のもので、シュワシュワと刺激が心地よい。この店も、先日出た「古典酒場」に載ったのだが、女将さんとお嬢さんが、得意げに客に見せて回っている。私にも見せようとしたところで、「もってますよ」とカバンから出してみせると、ますますうれしそうに「あら、よろしくおねがいします」。いい店だ。なかなか来ることのできない場所だが、また近いうちに行ってみようと思う。ハイボールは1杯300円。煮込みは味噌入りの薄味で、良くできている。名物という酢納豆は、べたつかず臭みも控えめで、朝食用に自宅でも作ってみようかと思わせる一品。(2008.4.11)

葛飾区堀切5-3-11
17:00-21:00 日祝休