橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

巣鴨「でかんしょ」

classingkenji2009-05-20

「千成」から居酒屋街をさらに奥に入ったところ、外側には派手な提灯がずらりと並んでいるが、中は照明が暗めで、落ち着いた雰囲気の立ち飲み屋がある。二軒目はここに入ってみることにしよう。この名前の立ち飲み屋は、見覚えがある。二年半ほど前、新小岩で入ったのが同じ店だった。しかし、こちらの方がモダンで感じがいい。店内は広く、大小のテーブルが十数卓並んでいる。店員の多くは中年女性たちで、新しく入ってきた客の様子をみては、いいタイミングで声をかけてくれるから、初めてでも注文に困ることはなさそう。
生ビール、ホッピー(ジョッキに作って出すもの)は三〇〇円。瓶ビールはサッポロ黒ラベル中瓶で、四五〇円。ハイボールは二五〇円で、天羽乃梅を使ったものとは少し違うが、これはこれで美味しい。ただの酎ハイなら、なんと一五〇円だ。本格焼酎が二〇種類ほどあり、三〇〇−四〇〇円と安い。二−四人ほど連れだったスーツ姿の中年男性のグループが多いが、若いカップルもちらほら。新小岩では老舗らしいが、こちらの店は時代に合わせて、より広い客層を受け入れるような店作りをしている。
店の大きさといい、おばちゃんたちの働きぶりといい、赤羽の「いこい」にちょっと似ている。「いこい」ほどではないが十分安く、料理の味は普通レベルを確保している。一〇〇〇円で一一〇〇円分のチケットが買えて、これで精算できるのも、新小岩と同じ。もちろん、キャッシュをテーブルの上に置いての精算もできる。(2009.5.15)

豊島区巣鴨2-3-5
15:00〜23:00