橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

低温調理の豚モツ刺

classingkenji2017-11-21

飲食店で生の豚モツ刺しを提供するのが禁止されて二年が過ぎたが、これに代わって低温調理の「モツ刺」を提供する店が増えている。注文すると出てくるのは、おそらく摂氏七〇度くらいで長時間熱した、火は通っているものの、ほんのり桜色だったり、生のような光沢があったりするもの。生刺しとはまったく別物で、毎回注文しようという気にはならないけれど、次善の策としてはやむを得ない。写真は、池袋に五号店まで構えるようになった「木々家」のメニュー。
食肉店には、生食できるグレードのものを販売する努力を続けて欲しい。消費者が自己責任で生食するのは自由だから。怖いのは、生食可能なグレードのものを提供する技術や配慮が、業界から失われることである。